詩人:黒烏
(いつの日だったかは忘れてしまった)
(何せもう、随分前の事だったから)
(君がこんなにも干からびてしまう程に)
君の膓ほじくりかえして
愛の詩紡ぐ事幾年
数え切れぬ自己殺め
掻き暮らす程に
深い双眸に気付いたのは
血濡れた己が手を晒したが為
この手が厄生み出すならば
ちょんぎっておしまいよ と
愛おしげに寄せた唇こそ
白布の君 年経るうち
可哀想に
こんなにも軽くなってしまったね
愛しさ余り命失えど
君の為ならば
幾度でもこの身滅ぼそう
ひび割れた口づけ
断腸握り締め
湖畔 独り 思った
寒湖に心寄せ
君の躰を冷たい水に浮かべ
口にするは祈りの詞
『どうか魂だけでも
この先安寧多からんことを』