詩人:甘味亭 真朱麻呂
暗やみに一際大きく輝くまん丸な月
耳を澄ませば遥か聞こえる虫の鳴き声
胸にあるのは月並みほどの大きな傷跡
思い出すたび胸の辺りを言い様のない痛みがおそう
高い高い屋根の上
尖った尖ったナイフのように
月が鉄塔に刺さっている
まるで大きな大きな鍵穴のようだった
暗やみにおぼろ月夜
ゆらりとうつろう
時の流れと微かな脈動
まるでそれは夢のような現実味を欠いた朧気な光景
そして深い闇が僕を楽しい夢へと誘う
あの日の悪夢から
まだ解放されていない僕
それでも夢はいつになろうと楽しく面白いものだ。