詩人:千波 一也
むらさきいろの透明グラスは
この指に
繊細な重みを
そっと教えており
うさぎのかたちの水色細工は
ちらり、と微笑み
おやすみのふり
壁一面には
ランプの群れがお花のかたち
あの狭い部屋のなかでも
こんなふうに育つだろうか、と
腕を組む
フロアに匂うキャンドルの灯りは
しずかに
したたかに
この足を地上から浮き立たせて
「もうしばし」と
ときを盗んで
たしかに燃やす
頬と
髪と
瞳と
なにいろにも染まり馴染んで
胸と
耳と
声と
かるくするどく
溶けてゆく
運河を渡る 風 一陣
人波の
おだやかな紅潮が
もうじき夕陽と
ぴたり
重なる