詩人:千波 一也
さくら かんざし
あかねの 鼻緒
ねむりの いわおに
腰かけ
仰ぐ
ちり ち り りん
金魚の尾ひれが
風鈴を蹴る
ちり ち り りん
黄色の帯と
左手
うちわ
嗚呼、ごらん
濃紺の天辺に白糸が染み渡ってゆく
だいだい
もえぎ
あお孕む、朱
浴衣の うなじに けなげな上気
愛でることばの
ひとつ ふたつが
ほろほろ 散りゆく 灯りを彩る
納涼の宵
盆のさかずき 笛 神楽
納涼の宵
さやかなる川 走馬燈
彼岸に あげは が さらりと溶けた
焦げの けむりは 船出の薫り
銀河の巡りは
かくも鮮やか
いちるの涙の流れに乗って 天へと昇るすべてのものへ
しずかのうみの
その凪
祈り
大輪の菊
いちりん
捧ぐ