詩人:さみだれ
夕暮れの影法師
全部拾っていくんだろう
哀愁の湿っぽい匂いも
鞄についた鈴の音も
暗色の草花も
引きずってまで持って帰る
誰のものでもないから
いつまで眉間に皺を寄せているんだろう
美しい絵画も眩しいだけで
あなたの目には残らないからか
ノスタルジーに
心を奪われたからか
この世界は特別だ
何もかもが見えなくなる
そうやって落としたものにも気づけずに
影法師のことも忘れている
追憶に囚われて
歩みをやめてしまわぬよう
夜は影法師を追い出した
夕暮れの衝動
がむしゃらに生きてみよう
そう誰かが背を押した
思わず一歩前に出て
振り向けば影法師は去っていた
そこに新しい景色を残して
新しい記憶を残して