詩人:千波 一也
窓越しのアルデバラン
暖炉が背中でうたうなら
ベテルギウスは指輪にかわる
ポタージュの香り満ちる星座紀行は
甘くも、はかない
やがて旅人は
アンドロメダへの郷愁にかられてゆくだろう
雪原は手招きをするだろう
吐く息の白さは
束の間だけ美しい
水のいのちが凍れるさまだ、と
浅はかさを知るのは数分の後
ダイアモンドダストの煌めきは天使の誘い
有無を言わさず連れ去ろうとする
天使の誘い
砂時計をこころに留めておかなければ
水のいのちは
砕け散る
それはそれは鮮やかに
砕け散る
毛糸の暖かさに包まれながら冷めてゆく夢を
一角獣座は
鋭く見つめることだろう
氷が笑えば水は俯く
手の温もりは
誰にも届かず消えてゆく
氷が笑えば水は俯く
北極星はいつも
旅人のために明るいのだが