詩人:山鳩
哀しみで散らかしたこの部屋の
後片付けが
どうにもうまくできない
寂しいと書いた紙くずも
あのゴミ箱にうまく入らない
愛を描いたきり絵をも
うまくハサミで切り取れない
紙キレばかりがこぼれて
床に舞い落ちたら
三毛猫のホームズが見上げていた
「哀しみという名の家具は
どこに置いたらいいのでしょうか?」
「哀しみと書いてないものは
哀しみじゃないのですか?」
さあ哀しみについての詩を書き始めよう
哀しみに濡れた少女が
深い眠りにつくころ
月明かりが南の窓から差し込むころ
机の上のえんぴつの先が
一筋の地平線を描き
赤い火星が沈んでゆく