詩人:千波 一也
むらさきいろの約束は破られることなく
 
野の一面に揺れる香りは
 
けものの匂いに
 
けがされない
 
いろと香りがラベンダー
 
あまりに無知な
 
目と鼻の先で
 
しずかに夏は終わりへ向かい
 
かるい汗のしたたりに
 
ハンカチが浅く溺れている
 
あらゆる書物をほどいてみても
 
はかないものの名前など
 
一覧になってはいない
 
いつ注ぐとも知れぬ雨に
 
あらがうすべは傘
 
太陽が味方であると信じれば
 
群れなす手のひらには
 
隙だけがただ明るい
 
いろと香りがラベンダー
 
誇り高いうるおいのなか
 
まったく同等に誇り高い
 
かわきの雨が
 
透けてゆく
 
風はきっとなにも知らない
 
より分けず
 
見破らず
 
すべてを流す波となる
 
きょうと
 
あしたと
 
その先に待つきのうへと