詩人:千波 一也
祈りを土に捧げましょう
記憶は
ひと知れず育ってゆきますから
たくさんの道で迷えるように
そのぶんしっかり
戻れるように
空を翔ける翼のない者たちは
すべての責任を
空に負わせる夢に焦がれます
けれどもそれは
はじめから
悲恋でありますので
この手と足と
ほどよく疎遠な土にこそ
日記を預けてみませんか
気が向いたならいつだって
四季の温度をすぐそこに
かよわい手のひらで
確かめることがかなうように
過ぎ去った総ては
思いのほかに思うがまま、です
祈りを土に捧げましょう
空ではなく
星ではなく
海でもなく
時計はもっと身近なところへ
ひと知れず育ちゆくものを
ひと知れず守りゆくため
祈りを土に捧げましょう