詩人:黒夢
一つのメモリを小さな液晶画面に表示して。
「YES」と「NO」の間で僕の指は止まる。
人間は酷く臆病だ。
たった一つの結論を
いつまでたっても導くことが出来ない。
世の中は便利になったものだ。
ボタン操作一つで、全てとの繋がりを断つことが出来る。
それは君とだって同じ。
こんなものが残ってるから、いつまでも忘れられない。
ああ、始めからこうしていればよかった。
水の中に沈んでいく鉄の塊が、酷く虚しい。
これでもう、迷う必要もない。
「YES」と「NO」の選択で、悩むことはない。
悲しくなんかない。後悔なんかしていない。
目頭が熱くなって。
伝う涙は、目にゴミが入ったことにしておこう。
痛むのは
この胸の奥。