詩人:サエ
初恋のはじまりは
彼が壇上に上がった瞬間
私の世界が変わった瞬間
募る想いは伝えようもなく
溢れる気持ちを打ち明ける術もなく
3年間 ただ毎日彼に会える特権を私は持っていた
彼の靴音、笑い声、袖を巻くる仕草
真剣な眼差し、車のナンバー
今でも 昨日のことのように思い出す
10年ぶりの彼の姿
何ひとつ変わらない姿
彼だけ刻が止まったように
何ひとつ色褪せない
私がいくつ歳を重ねても
彼との差は縮まる筈はないのだけど
大人になった今
見上げるばかりの壇上に
私も並べたようで
不思議と安堵するの
当時は夜も眠れないほど焦がれて憧れては
苦しくて切なさで仕方なかった恋
今は眠れない夜にまぶたの裏に浮かんでくる
笑みすら溢れそうなほど
微笑ましい睡眠導入剤のような思い出
あの時私が想いを伝えたことを
彼が今でも覚えていてくれたから
これからも私の初恋は
永遠に生きていく
褪せることもなく