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詩人:山鳩
鳥は空の嘘を知らないので
嬉しそうに空を飛んでるそうだ
でも空があるから鳥は空を飛べるんだ
僕もそう思った
だから
僕も君の嘘を知らない
知らないから君の空を飛んでいる
君は哀しみの涙を雲の上に置き去りにして
僕はそのはるか下を飛んでいる
悩みと苛立ちの海は
嘘という水平線にさえぎられて
さざ波の音さえ聞こえてこない
口をつぐみ黙っていることで
コトバを推敲し
あの大空の片隅に飾ることで
僕は君のしあわせのなかで生きられる
それが君の
僕への最大の優しさなんだ
※谷川俊太郎詩集『愛について』を読んで