詩人:千波 一也
小指はしずかにうつむいたまま
二度とは
乗せてもらえない背中の
去ろうとはしない
その無言
あいまいな距離のなかで
やさしい言葉が
やわらかに
燃えた
ためらいの数は
唇に映えて
行き止まりには後ろ姿を
あらわれるほど
硝子は薄く
冷たくて
まだ見ていないすべての無色を
嘘があふれる
褪せて震えて頼りなく、鍵
そこは
どこにも遠くない
つながらない
埋もれるものが声ならば
降り積もるものも
這い出るもの
も
手さぐりで永遠を散る
つかのまの
季節は
失うことが階段だったのかも知れない
ひかりを憶えた鈍痛に
小指はしずかに
うつむいた
まま