詩人:イデア
夢を見る。
灰色のアスファルト
夏の陽射し
私は芋虫で、やけに熱い地面を這っている。
どこに向かっているのか なぜ向かっているのか それは知らない。
目的は、しかし確かにある。
なぜか分からずとも私は必ずそこに行かなくてはならない。どことも分からぬそこに。
目が醒める。私は泣いている。
なぜ泣いているのか 何に泣いているのか それは分からない。
私は私であり、眼前に翳した手は芋虫の形をしていない。
朝日が射す。
目覚ましが出社までの刻を数える。
やるせなさが肩と胸とを柔らかく押さえ込み、やがてゆるりと悲しみに変わる。喉を刺す。嗚咽に変わる。ああ、そうかーーー
そうか 私は芋虫なのだ
向かう先も理由も見えぬまま、もぞりもぞりと突き進む、あの芋虫なのだ。
夢と現実がない交ぜになって私をかき混ぜる。
朝日が眩しい。影が貼り付く。
一日が、始まる。