詩人:さみだれ
彼は意思を頑なに守った
堅牢なバリケードに囲われ
金剛鋼の鎧を纏い
黙って目を瞑りながら
人は彼を引きずり込もうと
火を投げ入れたり
罵倒を浴びせたり
かと思えば流暢に世辞を述べたりもした
しかし彼はぴくりともせず
そのうち「あいつは死んでいるんじゃないのか」と
噂されるようになった
彼は意思を頑なに守った
川の流れにも動じず
どんと居座る大岩のように
人の流れの中に籠城しなければいけない
それは何を守るためか
人と手を取り合って生きなければならない
なら振り払われた手はどうなるの
意思をもって引き金を引いたあなたは
意思なんて持っちゃいない
仲良しごっこはもうたくさんだよ
有刺鉄線の向こうで
彼は静かに涙を流す