詩人:さみだれ
月の光のもと
眠る少年を少女は見ていた
今日まで溢さずにいた涙や
後悔や寂しさや
それらをすべて少年の頬の
まだほんの少し温かい少年の頬の
笑窪に触れて我慢した
(この森にはアスタロテがいてね
夜になると迷いこんだ旅人や
村の子供を魔法にかけて寂しくさせるんだ)
少女は思い出していた
昨日のことも一昨日のことも
もっと前のことも
「お母さんの声が聞きたい
絵本を読んでほしい」
そう思ってしまった少女は
涙を流しながら微笑んでいた
目の前にいた少年は霧のように曖昧になり
消えていくそばで
少女はついに眠りについた