詩人:明希
そこには、何度も行った事がある。
―――苦しい時、辛い時、悲しい時、弱くなった心が、何かを頼りたくなって、有りもしない希望を眺めてしまうんだ。
大切な人を大切にできないのは辛い。
現実を受け入れないのは悪い癖。
人を殺す覚悟なんか、僕には無理だ。
無知故に、奇跡を信じてられただけだったらしい。
「また諦めの良い子になってしまったなぁ」
誰ともなく、呟くのは自分自身。
まるで他人言。
―――出来る事なら、天国を見たい。そう思って空を仰いだ。昨日も今日も、一昨日も、気付いて見上げた空は、嗚呼、青い。ただ、そう思った。
淡々と様子を眺めている自分を、上の空の僕が眺めている。
肝心の気持はどこへやら,,,
ふわり、と飛んだ膨らんだもの。
ぱん、ぱんっ、と手を叩いて引き戻された意識は、罪悪感だけを残していく。
―――神様の元に出向いて、答えを尋ねるなんて芸当はできなくても、空を飛びたいと願うよ。
少なくとも此処に居るよりはー‥ずっとマシだから。
始まりの場所を想ったら、そこは迷宮、暗闇で、二度と出られないラビュリントス。
迷宮の住人は、抜け出す気力さえなくしたら
そこに住まう怪物と一緒なのかもしれない。
―――ねぇ、迷ってるよ。
現実には帰りたくない。