詩人:千波 一也
鎖骨の
においが
こぼれ落ちたら、
さかなのゆめに朝がくる
ことば未満の愛を交わして、
ゆっくりとたしかめる
てあしの記憶
水の
においの
シーツを背中に
羽をひろげるまねをして
ふたり、
月を宿している
鍵穴とも呼べそうなそれは
ひみつ、ではないから
ほどよく闇を
ひかって
みせる
真夏の午後へわたる風には
いつでも素顔を
そよがせて
やがては滅ぶたいようの
かなしみはまだ、聞こえない
いたずらじみた眼差しで
数えてよろこぶ
くちづけに
ふたり、
つがいの色になる
2008/08/11 (Mon)