詩人:トケルネコ
確かにその剥製は泣いていました
身動きもとれず
魂は枯れ
ただ一点を見つめることしか出来ず
それでもなお、泣いていました
声も出せずに
時間の空白の中で
虚ろな瞳の奥で
固まった翼を抱いて
夜の隅で
『届かないものばかりだ』
彼に言葉を与えたら、きっとこう云うのでしょう
『くだらない幻想さ』
彼に希望を与えても、きっとすぐに捨ててしまうから・・・
砂の上の
コンクリートの中の
汚れた布に包まり
彼は見てる
蒼い空を
飛べるはずだった
飛び立つはずだった
雲の彼方を
『失意』
その剥製のプレートにはかすれた文字でそう書かれていました
どこまでも表情のない視線の先には真っ青な壁だけがありました
乾いた瞳は何も捉えず、ただジっと薄笑いのまま・・・
けれど確かにその剥製は泣いていました