詩人:千波 一也
冬の辞書には
牙が満ちている
燃えようとして
生きようと、
して
裏も表もなく
ただ、それゆえに
いたわりがたい
鋭さが
ある
つめたさに似た
熱量、として
定義にふれる途中の者は
不完全なる
凍傷だ
冬の辞書には
それを癒しうるすべが
ありありと
溢れ、
同じ分だけ
消えてしまう
牙のかげに、
素朴で
従順な
牙のかげに、
救いの痛みはあるのだろう
刻まれてゆくことの
いさぎよい
悲しみが
冬の辞書には
満ちている
ときどき
上手に逃げそこなって
2008/12/25 (Thu)