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[18291] あぜ道(最後の旅路)

詩人:evans

あさま山を望む城下町 
信州小諸

この坂の多い町の中の
小さな村に広がる
たくさんの田んぼと畑

このあぜ道を

よくあなたと通ったね

還暦を過ぎたあなたは
ときに
大きな籠を背負いながら私の手をつなぎ
ときに
一輪のリヤカーに幼い私を乗せて

茜色の空につつまれながら
夕暮れの空につつまれながら
まだ舗装されていないこの道を
夕焼け小焼けの唄を歌いながら
一緒に家路に向かう

あなたの手のぬくもり
あなたの優しい声

いま鮮明に思い出す

きょう 92歳のあなたは
無言のまま 身動きもせず
たくさんの秋の花に飾られ

たくさんの人びとに
見送られながら

あの懐かしの
あぜ道だったいつもの道を

通ってゆく

天高き秋のあおぞら
ブドウの実に橙の渋柿
懐かしの村の風景

涙で霞んだ風景

おばあちゃん

いままでありがとう

そして さようなら

 

2004/10/14 (Thu)
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