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[62897] 黄昏ブラックトレイン

詩人:地獄椅子

電車は下り。
目的地は不明。
都会の喧騒から離れて、一人を旅する。
向かいに座るカップルがイチャついて、癪に触る。
そう言えば買い忘れてた。
さっきの駅の幕の内弁当、旨いんだった。
今日ほど青空が、悲しい日はないかもしれない。
煙草がハイペースで減ってゆく。
全身で幸福を表現する恋人達は、二人の世界から外は見えないらしい。
苛立ちと焦燥。
硬いシートに肩が凝る。
自棄糞と怯え。
孤独の終着駅へ、人生という名のトレインは進む。
流れに逆らうように、時へ反抗するように。
決められたレールのない、不確かな旅。
ああこのまま、銀河へ昇りたい。
闇に誘われ、虚空の果てへ。
宇宙の神秘的な謎の核心に触れたい。

どこまで行っても悲しみは付き纏う。
いつになったら、こいつと上手に付き合えるのか。
溺れる自我、妖しい未知に彷徨って。
きっとこのまま行っても、知らない街へ辿り着くだけだ。
まるで胎内にいるかのような心地好い揺らぎに任せて、微睡む。
車窓の外の景色には、もはや俺の知るものはない。
俺を知る者はいない。

伸びる未来。
長く続くレール。
俺が受け入れる数少ない優しさ。
ありのままでありたいという願い。
運んでくれ、トレイン。
もしも闇に包まれた時、俺の心が息継ぎできる場所へ。
何もかも時の流れが、せめぎ合いながら、矛盾を相克しようとして藻掻いている。
ギシギシと過剰な負担にひしめき合いながら。
軋みながら、歪みながら。
まるでこのタイヤとレールの摩擦のように熱を孕みながら。

不安、憎悪、憤怒、孤独、甘え、弱さ、嫉妬、猜疑、寂寥、悲哀、苦痛、憂欝、欲望・・・

数えきれない駅を過ぎ、両の腕に抱えきれないほどの感情が永遠と刹那の狭間、俺の中の俺を活かしも殺しもする。
手招きするような未来へと、俺の意志を貫く。


暗くなるばかりだ。
だが光は差すだろう。
同じ列車に乗りながら、違う人生を歩む。
孤独と孤独。
上っ面だけじゃ、解らないよな。

もはや祈るような心境に近い。
暮れ泥む黄昏時。
ひたすら加速しながら。
黒い電車は残酷に走る。
車内の人々は何を思う?

2006/01/12 (Thu)
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