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[63477] 黒い表紙の日記帳

詩人:地獄椅子

雨、上がったね。みんな傘をたたんでく。
日、伸びたね。こんな時間でもまだ明るい。

涙が明日を洗ってくれる。愛という洗剤でバシャバシャしよう。
恐くないよ。さあ行こう。
未来に続く扉をノックノック。

葉こすれの音。
穏やかな陽光。
生きててよかったね。
こんな日には鼻歌を。
笑うことができるから。
散歩がてらの柴犬にも愛想良く。

それでも少し淋しいのは、君からのメールが来ないから。
何度もセンターに問い合わせてみても“着信なし”。

知らない町で君は、仕事に忙しいみたい。
呑気で気楽な僕とは違って、君はとても真面目な人だから。

肩凝りは治ったかな。
悲しい夢は見てないかな。
朝ご飯ちゃんと採ってるかな。
枕は濡れていないかい。
心配で心配で君のこと。
遠い同じ空の下で、元気でいますか?


美しい世界が、何気ない足元に転がってるんだろう。
気付いてあげないと拗ねてしまうから、いつでも僕は小さな感動を忘れない。
ありふれた奇跡が、君と引き寄せ合ったり、離れてしまったり。
ことごとく色んな表情を見せるんだ。

もう随分開いてない。黒い表紙の日記帳。
B5版横罫の35行40枚のノートには、僕の想いがぎっしり詰まってるんだ。
あんなにも近くに、君がありふれていた日々の息遣いが密やかに聞こえてきて、胸が締めつけられるよ。

淡い水彩画みたいに鮮明だった記憶。
いつしか薄まり色褪せてしまうのかな。
そんな日が来るのが少し恐い。

初めて憶えた星座。
君の好きだったオリオン座は、うんと過去からの光を今夜も見せてくれる。
会いたくなるんだ。
思い出してしまって。
一晩中二人で夜空を眺めていたあの日。
次の日二人して風邪をひいた出来事。

会いたくなるんだ。
あの声と体温と仕草が愛しくて。たまらなくて。


まだ別れたわけでもないのに、悪い方に悪い方に考えてしまう。


雨、上がったね。
日、伸びたね。
君にメールしようかな。
返事はいつになるかわからない。

明日をノック。
君の心をノック。
恐くないよ。さあ行こう。
笑顔が今日を磨いてくれる。

2006/01/18 (Wed)
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