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[74938] 昨日までぼくの空気

詩人:けむり

放課後、
喧噪が色濃く残る静寂。
君は復習を始める。
面倒そうに。
ドアの向こうの座談場であいつがしゃべっている。
男友達や数人の女の子と、
とりとめもないことを、おかしそうに。
君の眼差しはぶれない。
背筋も緊張を感じさせない。
あの日になにがあったのかを君は感じさせない。
シャーペンがリズミカルに動いている。
窓は少し開いている。
レースのカーテンがやわらかく風にそよいでいる。
君はあいつの新しいメルアドを知らない。
でもその意味を知っている。
君は誰にも相談しない。
あいつは茶番劇にして男友達に話しているけれど。
ゆるやかな風が君の首筋をさする。
隠している緊張がほんのりとゆるむ。
目が合う。
静かな眼差しの奥に非難めいたものが見えるのは、
ぼくがあいつの新しいメルアドを知っているから。
それが全てではないにしても。
読み進めようと思っていたS・Kのダーク・タワー。
ぼくはそれをカバンから出さない。
放課後の教室が、ぼくのものではないことを感じている。
君はうなじを涼めるように指で髪をとく。
ぼくは窓の向こうに目を向ける。
まぶしい五月の張れ模様。
シャーペンがノートを走る音。
君の固い口元。
漏れ入るあいつの軽いトーン。
「お疲れさま」
一声。
返る君の押し流すような、
「お疲れさま」
押し出されるようにぼくは教室をあとにする。

2006/05/15 (Mon)
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