最後にお前が聞いた
俺の言葉が
「愛してる」
だったらよかったのに

妻よ、誤解することなかれ。

愛情は冷めたのではない。

固まったのである。

朝起きて
誰もいない台所に

ポツンと置いてある
まだ温かいお弁当。

もう少し早く起きていたら

ありがとうと言えたのに。

50年一緒に暮らしたのに

今は天と地球で別々に。

星を見て
「おやすみ」と言った。

返事があったような
なかったような。

あんた耳遠かったもんネ。

会社帰りにちょっと
立ち寄った姓名占い

あなたの苗字
借りてみました

この名前なら占わなくても
きっと幸せだよね、私

もしも人間に
犬みたいな尻尾があったら
ちょっと恥ずかしい

君と一緒だと
いつも振ってしまいそうだから

慣れない手つきで
孫をあやす父の横顔を見て

私もこんな風に
愛されていたんだと知り

涙があふれた。

お父さん、ありがとう。

「大阪と東京で
遠距離恋愛やねん」

と私がぼやくと、

「私なんて20年も前から」

と婆ちゃんが微笑んだ。

天国の爺ちゃん、
聞こえましたか?

おみくじは凶だったけど

こんな彼女と初詣してる俺は

限りなく大吉だろ、神様

波風たって 〜

からまって 〆

途切れて …

それでも
何となく繋がってる二人

誰か私達に
終わりの合図をして

彼なしの私を
早く始めたいの