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望月 ゆきの部屋  〜 投稿順表示 〜


[131] ワケもなく泣くぼく
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ワケもなく泣けてきた

ワケもなく泣けてきた
と、言ったのはどこか嘘で
きっと なにかあったのだ
ぼくがそれを認識していないにしても

ドラッグストアでもらった風船が
靴のひもを直そうと
かがんだすきに 逃げていった
ぼくの指をするりと抜けて

この感覚
どこかで たしか
この するりと抜けていく感じ
なにか 大切なものが

大切なものならば
ぐっと手に力を入れて
決してはなしてはいけないよ と
ずっと昔に大人たちが教えてくれたのに

そのとき教えてくれた大人たちも
きっと 数え切れないくらい
大切なものを失っていたのだろう

そして そのたんびに
つぶやいたに違いない
ワケもなく泣けてくる と
こんちくしょうな涙を流しては

そんなことを一瞬にして
考えながら
ワケもなく泣くぼく


ワケもなく 泣くぼく

2004/04/06 (Tue)

[132] 「くま」
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昔の彼女にもらった
シベリアンハスキーのぬいぐるみに
つい なまえをつけちゃったんだよ
そのせいで 
今もそれは ぼくの実家で生きている
そんな事情は知らない
ぼくの家族に守られれながら
ピアノの上に座っている

昔の彼女の何もかもを
いとも簡単に処分できたのに
シベリアンハスキーだけは
生きつづけてるんだ

それから ぼくは
ヒト以外には
なまえで呼ぶことは やめた
すべてのものを
客観的に 
遠巻きに見守る決心で

だから ぼくは
心底 ぞっとしたんだ

今 ぼくの部屋に
たったひとつあるぬいぐるみを
きみが 手にとって
「モモちゃん」なんて呼んだときにはね


「くま」にしとけよ

2004/04/06 (Tue)

[133] お月さん
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最近 ちっともうまくいかない
いいことなんて これっぽっちもない

パソコン教室で知り合ったあの子からは
ぼくが送信したメールの
誤字脱字を指摘した返信がきたけど
それからまたメールを送ったら
それっきり。

英会話教室で知り合ったあの子とは
夢の海外生活についてさんざ語り合ったけど
1ヶ月したら 
さっさと一人で留学に行っちゃった
手紙ぐらいくれるかな
ぼくの住所も知らないけどね。

あまりにも ぱっとしない
ぼくの毎日をうらんで
どうか どうか と
お月さんに毎晩お願いしてるんだけど

ぼくがあまりにお月さんにばかり頼むので
小惑星に住む性悪な宇宙人たちが
徒党を組んで嫌がらせをしているとしか
思えない

お月さん なんとかしてくれないか

2004/04/06 (Tue)

[134] 待ちぼうけ
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どれだけあせってみても
一日が25時間になるわけでもなく
夜は 確実に
手を引いて 朝を連れてくる

起き抜けにのぞいた鏡には
昨日と同じぼくがいる
けれど
今日という日は 決して
昨日と同じ一日では ない

そして
この今日という一日の先には 
まちがいなく 明日が待ち合わせしている

あわてずゆっくり歩けばいいよ
今日を たしかに生きておいで と
缶コーヒーなんて 飲みながら


ぼくたちは いつも
明日に遅刻する

明日は 常に 待ちぼうけだ

2004/07/31 (Sat)

[135] 欲しいモノ
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「ラムネ買って」

「チョコレート欲しい」

そう言ってねだる子供達に
困り果ててなお笑顔の母親たち


あのころ
欲しいモノといえば

せいぜい駄菓子屋のおばちゃんに
100円玉ひとつ渡したら
山ほど買えるような 
そんなものばかりだった


いつからだったろう
100円玉を渡す相手を
神様 に変えたのは


ぼくの欲しいモノも
スーパーの棚に
ラムネやチョコレートと肩を並べて
陳列されていたなら
こんなにも 苦しまずにすむだろうに


欲しいモノがなんなのか
それすらも忘れ果て
そればかり考えて過ごす
ある日


神様でさえ
かなえられないことがあるのだ、と


空に貼られた
特売のチラシで

知ってしまった

2004/05/12 (Wed)

[136] ぼくの将来
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きみは ぼくの将来を考えて

サヨナラと言ったみたいだけど

そんなのは

まったくもって本末転倒だね


ぼくの将来は

きみと一緒にいるってのが

大前提だってこと

知らなかったとは 言わせないよ

2004/04/08 (Thu)

[137] はらぺこなぼく達
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はらぺこなぼく達は
いつも何かを食べている
それはご飯粒に限らない

時にメディアから流れ出る
時に2軒隣のスピーカー

はらぺこなぼく達は
道端の石を拾い
それを 空に飛ばしては
また 拾う
いつか金貨になることを祈って

はらぺこなぼく達は
はらぺこなくせに 好き嫌いが多い
それは メインディッシュに限らない

時に自分に向けて発せられる侮辱
時に誰かのサヨナラという言葉

はらぺこなぼく達は
それでも いつか
お腹いっぱいになるのだろうか

物語では
はらぺこなあおむしは
最後はちょうちょに大変身をとげたが

はらぺこなぼく達は
いったい何に変身し得るだろうか


はらぺこなぼく達の
はらぺこな未来

2004/04/08 (Thu)

[138] だらだらと過ごそう
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何も考えずにだらだらと過ごそう
もう 何も

カーペットの端っこが折れていても
直すのやめよう

キッチンの床に水滴が飛んでいても
ぬぐわないでそのまま

部屋の隅にもしかして
わたぼこりとか発見するかもしれない
けれども 放っておこう

誰かからの電話も出ない

誰からかなんて考えないでいよう

ソファの上で寝転んだまま
立ち上がることさえ 躊躇しよう

そうやってだらだらと過ごそう


完ぺき主義が
邪魔しようと必死だけれど


なにもかも 
いっぱい 考えすぎて

なにもかも
失ってしまったことのある
ぼくだから

2004/04/09 (Fri)

[139] いっぱいいっぱい
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遠い空の下で
今まさに起こっている出来事が
メディアから流れてくる

それに耳をかたむけすらするが
心までは かたむけてはいない
と、いうところだろう
おそらく大多数の人々が

すべてがいい方向に向かうといいけど。

そんなふうに考えながらも
魚を焼いた後の
焦げ付いたフライパンを洗うことに
僕はいっぱいいっぱいになっている

2004/04/10 (Sat)

[142] 空が笑ったら
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空が笑ったら迎えにきて


そう言って 
きみは去っていった

わかった 
とぼくは言った


ぼくは 
今もあの時のあの場所に立ち
一歩も踏み出せないまま
シャボン玉をとばしている


空のせいではない


雲ならいつも笑っているし
風ならいつも笑っている

太陽はときどき 泣くが
それはそうとして


空のせいではない


空が笑ったら 
ってきみは言ったけど


それがどういうことなのか
ぼくには 
てんで わかんないんだよ

2004/05/05 (Wed)
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