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千波 一也の部屋  〜 新着順表示 〜


[1179] 常夜灯
詩人:千波 一也 [投票][編集]


なにも

視なくて良いのなら

なにも視ないで

おくが良い


なにも

聞かずに済むのなら

なにも聞かずに

おくが良い



常世をわたる夜の舟には

信じた過日が乗っている

にわかには

信じがたい姿で

時々向こうを許して

みせる




 洗い流したはずの鱗粉に

 うずもれている呼吸を

 見出せ、はやく




落ちてゆくのも

のぼってゆくのも

とらわれのない

従順な途


からまる糸が

淡く通過を始めたら

夜はまっすぐ

影になる


隠れようのない

炎と水が

時間を

結ぶ




2012/11/23 (Fri)

[1178] 余白
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なにを

描きましょうか

その余白には


なにを

足しましょうか

その疑問には


なにが

不満なのですか

その完成の


なにが

不自由なのですか

その独走の


なにを

飾りましょうか

その余白には


なにを

残しましょうか

その夜道には



2012/11/23 (Fri)

[1177] 臨月
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伏すべきあては

知らずにきたから

ねがいはさほど

鋭くはない


それでも

痛みは確かにあって

聞くべき声は

必ずあって

これまで

何度も

失ってきた


拾い集めた鏡のなかに

夜のかけらを

光らせて

何度も

何度も

求めつづけた


もう二度と、など

果たせもしない

いつわりならば

明日また

生きていよう


生まれてこよう

広大なこの

灯りの

すみに





2012/11/23 (Fri)

[1176] 金字塔
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いつしか

まぼろしは

味方になりすまして

あらゆるひかりの

残酷さを

麻痺させて

しまう


綴られた文字の

内側も

外側も

しらないならば

しらないなりに

柔らかくなれる

硬くも

なれる


この手に

触れられない

すべての記憶の源を

敬うことが

もっとも

重い鍵


罪ならぬ罪を

美しく

染めて

しまう

もっとも

暗い






2012/11/23 (Fri)

[1175] シンプル・ハート
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やさしい話が好きなので

易しいこころを

うたいます


そうして

継がれてゆくうたは

どれほど賢い

毒でしょう


毒に

あかるい

小鳥の群れが

毒をおそれる矢に

射られても

易しいことばが

かこうでしょう


やさしい話の表紙には

先のとがった

ハートを添えて

ささいな傷など憂えない

易しいこころを

つなげましょう




2012/11/23 (Fri)

[1174] 風のベル
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胸の向こうを

呼びさますのは

いつもささいな風ばかり


誰がおくった風なのか

どの手がとどける

風なのか


わからぬことを

受容したなら

そっと

だれかに

響くだろうか


だれかの朝を

告げるだろうか




2012/11/23 (Fri)

[1173] 包囲網
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わたしの不幸は

加護にある

わたしの幸も

加護にある


それを

知らずにいるわたしと

知っているわたしと

どちらでも

選べるというのに


わたしの孤独は

不幸をもたらす

わたしの孤独は

幸をももたらす


道標など

はじめから無い

どこにも

無い


あるのは音だ

不透明に

鳴り続く

音だけ






2012/11/23 (Fri)

[1172] 百獣
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宿るものは

名を持たない


宿らせるものもまた

名を持たない


互い違いに

突き立て合う牙ならば

いずれも等しく

慈しみであり

哀れみである



朝にはむく毛

昼には四肢

夜には眼



司るものは

名を呼ばない


呼ばせているものが

あるならば

それは

証だ


いわれのないものごとを

脱ぎ捨てようとする

ならいの

正しさの

証だ



2012/11/23 (Fri)

[1171] 驟雨
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困りごとのはずなのに

駆け出すひとの

影は、きらり


驟雨をうらむ

ことばの裏は

どこか、にやり


つかのまの騒ぎが

ぴたり、と止んだら

影はうつろい

やはり、きらり。





2012/11/23 (Fri)

[1170] くだらない話
詩人:千波 一也 [投票][編集]


くだらない話を

しませんか

時間の無駄とおもえても

さほど影響のない

無駄ですから


こころを

試してみませんか

こころを

許してみませんか


こころを

誘ってみませんか


どうでもいい、と

おもえることが

どれだけほんとか

眺めませんか




2012/11/23 (Fri)
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