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猫の影の部屋  〜 投稿順表示 〜


[513] フラグメント。
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住み慣れた町の空は

妙に優しくて


流れたものを

冷たく光る月には

見えないようにしたんだ


引き裂いた大切なものは

きっと元には戻らないだろう

そう思うことにした



何も見たくなかったのだ

だから空を眺めた


消え入りそうな星を

なぜだか掴もうとした

届かないことなんて知ってた


叩きつけた大切なものを

その欠片を拾い集めた

それしかできなかった



吐き出した煙は

夜の空に溶けたろう


大切なものの欠片を

手に抱えて歩き出したんだ

そうしようと決めたから


そう思ったんだ





2010/11/25 (Thu)

[514] 奇形。
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大人になりきれない

歪な体を引き摺っていた


手を伸ばしても

届かない所以か


わかりゃしないぜ

君の気持ちも心持ちも

わかりたくもない



子供にもなりきれない

奇天烈な体 抱えていた


頭をカラにしても

汚物が残る故か


信じ切れやしないんだ

ヒトの建前や体面も

どれも嘘にしかみえない



歪な体 あちこちが痛い

泣いて叫んでも 奇妙な声が出る



足掻いた指先が 空を掴んだ

2010/11/29 (Mon)

[515] 冬の記憶。
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肩をすくめ 自転車を漕いだ

いろいろなものが 肌を突いた



なくしてしまったものは

見つからないまま

手に入れたはずのものも

見当たらないんだ


人は年を経ると大人になるという

うまくいかないこともあるもんだと

俯いて笑った



しまっていたセーターを出す

余計なものまで零れ落ちた



忘れていたはずのことを

思い出してしまって

覚えていたはずが

引き出せなくなった



人は年を経ると忘れるという

うまくいかないこともあるもんだと

空を見て笑った




人は年を経ると笑えるという

うまいことをいうもんだと

君を見て笑った

2010/12/09 (Thu)

[516] 冬、月。
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冬の寒さを思い出したように

凛と浮かぶ月を見上げた


広げた手の平の肌が軋む

少しピリリと音を立てる


肩をすくめるこの時間が

思いの外素晴らしいことのように

思えて

思えた



冬の寒さを噛み締めるように

凛と澄んだ風を吸い込んだ


吐いた息が宙に溶ける

クルリと輪を描いて





冬の寒さを思い出したように

凛と浮かぶ月を見上げたんだ


2011/01/20 (Thu)

[517] 君の名を呼ぶ。
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かさついた肌に、何かを染み込ませるように、ゆっくりと、君の名を呼ぶ。

風が喉を駆け抜け、大気を震わせる。

それは草木を揺らし、大地を豊かにし、空を晴れ渡らせる。

星が瞬き、月がぱっくりと夜空を割る。

指先でそれを感じとったら、冷めた野菜ジュースを口に含む。

世界を吸い込んだら、また僕は君を想い、玄関をでる、そういう寸法だ。

2011/07/17 (Sun)

[518] ブラインドの隙間。
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星はどこかに押しつぶされて

月の光は届かない


矛盾や裏切りを抱えて

僕らの胸はジクジクと痛む

傷口はうまく塞がらない


君の笑顔やよく汗ばむ手の平も

その全てを抱きとめたくて

どんなに血が流れても

そのために何を失っても

それだけは守りたくて



生命はまんまと削ぎ落とされて

声もふるわない


思い込みも真実すら呑み込んで

僕らの胸はジクジクと痛む

傷口はいつまでも濡れている


君の声もよく涙流れる目尻も

その全てを受け止めたくて

どんなに馬鹿げていても

そのために蔑まれても

それだけを守りたくて



矛盾や裏切りを抱えて

僕らの胸はジクジクと痛む

傷口はうまく塞がらない

それでも、僕らはこの手を離さなかった

離せなかった、この手だけは

2011/07/22 (Fri)

[519] もどらないひび
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残った傷痕をなぞるように

過去を目蓋の裏にあぶりだす

切ないほど気持ちよく僕は笑い

その隣には君がいる


君の残像を愛でて

足りない部分は苦痛で埋めて

マゾヒスティックなやり方で

少し自棄なのかもしれない

それでいいと思う


あり得た未来を下手なタッチで描き出しては破り捨てる

そのチクリとする執拗な痛みが心地よいのか

足は一歩も前に出ない


悲劇的に自己愛的な生き方をしている

2011/09/06 (Tue)

[520] 発光ダイオード。
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足取りが重いのは疲れているだけじゃないはずで

発光ダイオード

目に染みるのは 特に意味がないみたい

目線を落として歩くのは、特段首が重いってわけじゃ

発光ダイオード

ところどころ切れているのにも
多分意味なんてない



滲んだ光のように なあ

描いたはずの夢のカケラ

今まだポケットに入ってんだ

どうしたらいい なあ

どうしたらいい



ため息が多いのは苛つくことが増えただけってわけでもなく、

発光ダイオード

この光はどれくらい息が続くのだろうって、

また意味のないことを



滲んだ明日を なあ

描いて捨てた夢のカケラ

まだ集めて重ねようぜ

たまにはいいじゃないか

たまにはさ

いいじゃあないか。





発光ダイオード

今日も小さく輝くんだ

2012/01/03 (Tue)

[521] gentoh.
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あのときの笑顔も笑い声も、
あのときのぬくもりも安らぎも、
安心して きっと色あせて きっと忘れてゆけるから

あの日見た夕焼けや夜の星も、
あの日見た幻や未来も、
安心して きっとすり切れて きっと消えてしまうから

ありあまる喜びも
零れ落ちる哀しみも
抱きしめたい幸せも
噛み締める苦しみも
いつか いつか いつかきっと
いまに いまに いまにそっと





歩いてゆく

2012/04/03 (Tue)

[522] あいのうた。
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ぼくはぼくのうたうたう。

いつかきいたメロディにのせて。

ぼくはぼくのうたうたう。

君への想いものせてさ。


君の顔を僕はあまり好きじゃない
どちらかというともっと小顔がいいな。あと受け口じゃないほうがいいし、ええと、もっとシュッとしてるのが好きなんだ。



ぼくはぼくのうたうたう

いつかきいたメロディにのせて

ぼくはぼくのうたうたう

君への想いものせてさ。


君は靴した半分抜いで歩くのが好き、さらにそれを布団の中で脱ぐのが好き。亀と話しては笑い、亀から僕に挨拶をさせては笑い、かなしそうな顔したかと思うと笑う。

そんな君が好きだー

そんな君が好きだー

ぼくはぼくのうたうたう

いつかきいたメロディにのせて

ぼくはぼくのうたうたう

君への想いものせて。

2012/04/07 (Sat)
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