[680] 忌の館(怪談企画D) |
より恐ろしい不思議な話を語ります。
[734] タイムホール - どるとる
Oさんの昔住んでいた家には庭にそこそこ大きな柿の木があった。 ある仕事が休みの日、ごろんと横になっていた。窓から庭の柿の木が見える。 なんとなくじっと見ていたら根元のところ(地面から40センチばかり離れたところ)に木に直接穴が空いているのに気づいた。 あんなところに穴が空いているなんておかしいなと思ってると青い顔をした何かが突然その穴から顔を覗かせこちらが見ているのに気づくと焦った感じで 「あ、間違えた」 そう言って顔を引っ込ませて穴の奥に消えた。 やがて穴もだんだん小さくなり渦を巻くように消えた。 それはまるでドラえもんに出てくる未来や過去に行く際にタイムトンネルの出入り口となるタイムホールのようだったらしい。 2016/07/22 12:31
[736] 娘 - どるとる 事故で娘さんを亡くした夫婦の話。 父親は現状を受け入れたんだけどお母さんのほうは気がふれちゃった。 一日中ぼんやりとしてまともに食べることさえしない。 風呂にも入らずタオルで父親が体を拭く。 そんな日々が五年くらい続いたある日お母さんが変なことを言い出した。 「あなたがね会社で家を留守にしてるときに押し入れに娘と同じくらいの女の子が私に話しかけてくれるの」 少しずつ人と話ができるくらいに回復してくれたのは嬉しいが変なことを言うのは気になった。 ある日会社が半日の日があって家に戻ると妻が押し入れに向かって話をしている。 しかし会話は一方通行。ひとりごとで妻の声しか聞こえない。 声をかけようか迷って黙ってそれを見ているとやがて閉まっていた押し入れがすぅーっと開く。 (えっ)と思ってると 押し入れから顔がひょっこりと覗いた。 それは妻がいう女の子というものからはかけ離れた。 いや、それ以前に人間というものからかけ離れたものだった。 顔の皮が全体的に上部へ持ち上げられたとでもいうのかそんな顔をした奴がうげっうげっとゲップのような声を出しながら少しずつ少しずつ妻に迫る。 そのたびに押し入れが開いていく。 急いで妻の手を握り無理やりに妻を連れ出した。 その後荷物をまとめると半ば夜逃げのようにその家を出た。 家を出ると妻は日毎に元気を取り戻して行った。 あの家の由来はわからないが、多分家とは関係ないとは思う。 2016/07/24 15:11
[737] 田んぼの畦道を歩く行列 - どるとる 国仲は幼い時分から体が弱く時々実家のある都会を離れ田舎の祖母の家に預けられることがよくあった。 田んぼや畑ばかりの風景。 つきぬけるような青い空。 都会とは違い自販機もましてやコンビニもない。 田んぼと田んぼの間には細い畦道が通っておりギリギリ人を二人横に並べたくらいの道幅しかなくよくその道を散歩がてら往復していた。 その日も夕暮れ時、暇をもて余していた彼は田んぼの畦道を歩いていた。 家に向かって歩いていたら田んぼを三つか四つばかり離れた場所にこちらと同じように畦道があるのだが、その畦道をたくさんの行列が歩いているのを見た。 その姿は異様で影のように黒かった。 着ている服さえもわからない。 逆光で見えないのかと思ったが、どうも違う。 まるで色を抜いたように影のように人の姿だけが黒いのだ。 じっと様子をうかがっているとその中の一人がこちらを見た気がした。 突き刺さるような眼差しで隙あらば襲いかかってきそうな敵意を感じた。 怖くなったので走って帰った。 逃げる際遠く鐘の音がチリーンチリーンと鳴ったのを覚えている。 2016/07/24 15:21
[755] 手渡し - どるとる 独り暮らしをはじめて最初の日、 片付けもそこそこにして疲れてたので休んでテレビを観ていた。 テレビに夢中だったのかふいに隣の部屋から声がした。 「酒くれ」 そちらを見ずにあいよとビールを伸びてきた手に渡す。 その瞬間、はっと気づいた。 隣の部屋をバッと覗くが、もちろん誰もいるはずもない。 無意識に渡したから記憶が曖昧だが、やけに青白く長い手だった気がする。 2016/08/01 07:57
[756] 山に棲む蛇体の神様@ - どるとる おばあちゃんから聞いた話なんでかなり昔の話になる。 戦後まもなくのことその頃おばあちゃんは学校に通う学生で、裁縫と料理を得意としていた。 ただ、外に出れば遊ぶのは女の友達よりも男の友達のほうが多かった。 今と違い遊ぶとなれば山と相場が決まっていた。 山といってもそれほど大きな山ではなく丘を少しばかり大きくしたようなものであるが、広場のような開けた場所もあるのでそこで球遊びやかけっこなどをしてよく遊んだそうだ。 隠れん坊をやってたと思う。 自分が鬼であと一人で全員見つかるというときになって探してると道の真ん中にぼうっと立っているのを見つけたので、 「〇〇見っけ」 そう声をかけると男の子はそっけない返事をし、 「今そこに見たこともないきれいな女の人がおってな、こっちに手を振ってた。上半身裸ん坊だった。白い乳房が見えとった。見んかった?」 何をばかなことを言っとるんだと思っておばあちゃんは呆れつつ適当にあしらいその日は帰った。 翌日、またその山で遊んでたら大きな箱を二人がかりで運んでるおじさんがいたので何をしてるのか聞いた。 「山の神様に供え物をしに行くんじゃ」 そんなことを言う。 考えてみるとそういえば山の奥に社みたいなのがあったことを思い出した。 それで、なぜかはわからないけどそのおじさんにみんなでついていくことにした。 社は立派なもんでお酒の一升瓶が供えてあったり野菜が供えてあったりした。 手を合わすおじさんたちにならって子供らも真似して手を合わした。 それから何日かした頃に山で消えた子供がいたそうだ。 何日も何日も探したのにも関わらず見つからない。 神隠しだと信心深い人たちは騒いだが何ヵ月かした頃にひょっこりと子供は親元に帰ってきた。 話を聞くと山の神様のところに行ってた。 そう言う。食事はどうしてたかを聞くと 2016/08/01 22:21
[757] 山に棲む蛇体の神様A - どるとる 神様がとってきた小動物の肉を食べていた。 神様の胴体は蛇のように長く鱗のようなもので覆われていたという。 顔は頗る美人で言葉は通じないし姿こそ恐ろしかったがとても優しくしてくれたという。 あとで(天狗の隠れ里)に似た話だと思った。 神様のディテールも蛇とあって神聖な感じがする。 その時代の匂いや空気が感じられる貴重な話のような気がする。 2016/08/01 22:30
[758] 首振り人形みたいな子供@ - どるとる 子供の頃、親戚の家によく行った。 それというのも親戚の家には自分と同い年のみっちゃんという男の子がいたからである。 長い休みになると必ずその親戚の家に行く。 小学校の四年にもなると山道も楽々のマウンテンバイクを飛ばして30分程度で親戚宅に行けるためその頃になるとよく頻繁に行っていた。 その親戚の家の裏にはその親戚が所有する竹やぶがあった。 よくその竹やぶで遊んだ。 遊ぶといってもくだらない話なんかをしながら探検ごっこをするだけ。 でもそれがなんだか楽しかった。 話の合う友達と好きなアニメや漫画の話で盛り上がる。 夕方近くになってしまったので帰ろうと竹やぶを来た道に戻った。 だいぶ奥まで来てしまったようでなかなか入り口が見えてこない。それほど広い竹やぶではないもののうす暗くなると方向がわかりづらくなる。 やがて入り口が見えてきて暗くなったからおじさんの軽トラで自転車荷台に乗せて送ってもらおうかなんて話をしてると急にトイレがしたくなった。 恥ずかしい話、大だった。 家までは持ちそうになかったので仕方なく竹やぶの物陰ですることにし、みっちゃんに待っててもらうようにして一人適当な物陰にしゃがみそこで用足しをすることにした。 踏ん張ってやっと出るものも出たのでズボンを上げてチャックを上げた。 さあ帰ろうとしたときにふと背後に視線を感じた。 その視線の先を見ると異様に頭のでかい子供が薄ら笑いを浮かべながらこちらを見ている。 まるでその頭はカボチャのようで、水風船のように巨大でありその重さのためか首がぐわんぐわんと上下左右にゆっくりと揺れていた。 「うわ、これは見てはいけないものだ」 そう思って帰ろうとした瞬間に(ドスン、ごろろろ)と何かが転がる音がした。 ふいにその子供のほうを見ると首が地面に転がりその転がった首がこちらをじろりと見ていた。 2016/08/01 22:45
[759] 首振り人形みたいな子供A - どるとる 怖くなって、走って逃げたが、入り口にたどり着く間際までケラケラという笑い声があたりにこだましていた。 必死の形相でやって来た僕にみっちゃんは何があったのかを聞くがさすがに今見たことを説明するのは怖かったので何でもないとごまかした。 それからは竹やぶで遊ぶのはやめて遊ぶのはもっぱら家か庭に限定した。 2016/08/01 22:48
[760] 夜の葬儀@ - どるとる 真夜中にお葬式をしているのを見たことがある。 いまだに夢なのか現実だったのかその辺がはっきりせず曖昧な話だ。 栃木県にDという町がある。用事がありそのD町に来た。 用事を終えて宿泊先で夜まで寝てしまった。 煙草と麦酒を買いに近くのコンビニに行った。 コンビニの帰り、裏道を使おうと冒険してみることにした。なにぶん慣れない道なので迷うのはすぐである。 同じ道に出てしまう。そんなことを繰り返してるうちにある家の前まできてしまった。 「〇〇家葬儀」 そう書かれた看板。門があり両側に御霊灯。 夜に葬儀か。そんなこともあるのかなと思って、立ち去ろうとした瞬間、門が開いた。 ギギィという嫌な音を立てて門が開くと喪服を着て髪を後ろで縛った女性が私に向かって 「今日はお忙しい中ありがとうございます。あなたも葬儀にお越しになったのですね。どうぞこちらです」 そう言ってシャツの袖を引っ張る。 その力が尋常じゃなく抵抗することもできずあれよあれよという間に玄関、廊下と来て仏間に連れて来させられた。 「ご焼香をお願いします」 そう婦人は言った。 見ると電気を消したほぼ真っ暗な部屋に月の明かりだけが差し込んでかすかに暗がりを照らしていた。うつむいて顔の見えない数人の喪服姿の人たちが両側に座っていた。 ご焼香をするだけならいいかと適当にご焼香をすまし、手を合わせた。 故人の遺影は暗くてよく見えない。 帰ろうと向きを変えると 座っていた人たちがバッと立ち上がる。数珠を手にいきなりお経を唱えはじめた。 うろたえていると数珠を持った数人がじゃらじゃらと数珠を擦りあわせる。 「なむみょうほうれんげきょう…」 法華経を唱える数人の間を潜り抜けて廊下、玄関と来て玉砂利の敷かれた道を門まで走って逃げた。 門を出たところから記憶が途切れている。 目覚めたときには 2016/08/01 23:15
[761] 夜の葬儀A - どるとる 宿泊先のベッドの上だった。 しかし、部屋中に線香の香りが充満していた。 嫌な夢を見たと思った。 あとで気づくと革靴の裏が腐っていた。 その靴は捨てて新しいのを買った。 自分は参加してはいけない葬儀に出てしまったのではないかと思うと今でも気味悪くて仕方がない。 2016/08/01 23:20
[762] 呼子 - どるとる
Nは昔、不気味な体験を一度だけしたことがある。
近所に空き家があった。 表札は削れてしまい名字はわからなかったが、以前まで年寄りが一人で暮らしていたという話だけは知っていた。 その頃、噂でその家を夜に通ると窓に人影が見えると言われていた。 夜中、塾帰りたまたまその道を通った時にその家の前に来たときにその家にまつわる噂を思い出してしまった。 走って帰ろうと下を向きながら通り過ぎようとした直後ふいに名前を呼ばれた。 「たくや」 咄嗟に声のしたほうを見てしまった。 窓に人形のようなものが吊るされていた。 よく見ればそれは首だけで金色の髪飾りをつけた雛人形の首だった。 気のせいかと思って多分誰かのいたずらだろうと行こうとした時に再度 「たくや」と呼ばれた。 えっと思ってもう一度同じ窓を見ると巨大な首がこちらに向かって たくや、たくやと何度も呼び掛けていた。 さすがに怖くなり逃げ帰った。 それからはその道は通らない。 2016/08/06 05:48
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