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感想掲示板  〜 記事No.806に返信します 〜

[806] 親切心@
投稿者:どるとる


園田は昔から周りからも評判の良いいわゆる(いい人)だった。

「彼を恨んだり憎む人なんかいないわ」
社内のOLたちが茶飲み話をしている。

「でもいかんせんぱっとしないのよね。さえないっていうかさー」

ある日、昼休み会社の近くにある公園でいつものようにベンチに座り弁当を食べていると子どもが目の前で転んだ。

すかさず駆け寄り大丈夫かとたずねる。

しかし、あとからやって来た母親に睨まれ子どもが誘拐されるとでも思ったのかすごい剣幕で怒鳴られた。

「なんだよなあこっちは親切で話しかけただけなのに」

思えばその日を境にして親切をしても報われなくなった。

些細なことだったが、今までは人に親切にするのが生き甲斐だったのに親切が報われなくなったとたんに親切は人によっては余計なお世話なんじゃなかろうかと思えてきた。

しかし、報われないからといって人に親切にしないではいられない。それが人情であり彼の人柄だからだ。

困ってる人は放ってはおけない。

負けじと親切にしたが、やはり報われない。

お財布を落とした老人に落としましたよと渡すと泥棒に間違えられた。

とうとう彼は人に親切にすることがいやになってしまう。

考え方を変えてぎゃくに人に冷たく接してみた。

すると、驚くことに軽蔑されるどころか感謝された。

親切しようとしていたときには味わえなかった懐かしいありがとうの言葉を聞いたとたんに涙が溢れ出した。

親切は報われなくても誰かのためになるなら親切にすべきだ。しかしときには思いがけない行動が親切に繋がったりするんだ。僕は今までは親切にすることに喜びを感じていただけだった。本当はありがとうの言葉に喜びを感じていたのかも知れない。

それに気づいたときになくしていた自分を取り戻せた気がした。

2016/10/05 12:29


[807] 親切心A - どるとる

休日、バスに乗った。

隣に立っていた人がバックを落としたので思わず拾ってしまった。

「また泥棒とかって勘違いされるんだろうな」

そう思いながらも落としましたよと手渡したとたん、バックの持ち主はぱっと明るい表情になり、

「ありがとうございます。このご恩は一生忘れません」

周りに同乗者たちや運転手までもが君は素晴らしい人だともてはやす。

どうなってるんだろうと思った。

バスが停留所に着くと、同乗者と運転手が全員で園田を胴上げした。

「園田!園田!園田!」
園田コールが巻き起こる。は
胴上げされたまま、園田はお神輿のように横断歩道まで連れていかれる。

信号は赤だった。
いきなり園田は道の真ん中に放り投げられた。

そこに入ってきたダンプに轢かれる園田。
園田の悲鳴が上がる。

園田を抱えていた人たちは泣き叫びながら歓喜し、

「なんて素晴らしい死に様なんだ。園田万歳」

狂喜しながら万歳三唱をする一同。

ダンプから降りてきた運転手がそこに加わり運転手も万歳をする。

「園田バンザーイ!」
2016/10/05 12:39

[808] 魅惑の体臭@ - どるとる

「ちょっと、私の服と一緒にしないでよ」

江川は洗濯機の前で娘に洗濯物を一緒にされることを拒否された。

小さな頃はあんなに素直でかわいらしかった娘も年頃になると冷たい。

ある日残業後、家に帰ると娘からめずらしくただいまと言われた。

普段は自分を見るとあからさまに嫌な顔をする娘が笑ってただいまと言った。

いいことでもあったのかと思ったが、風呂上がりにビールを出されたときにはさすがにおかしいと思った。

「どうしたんだ?今日はばかに優しいじゃないか」

そう言うと娘は自分に鼻を近づけて匂いを嗅ぐしぐさをし、

「今までが厳しくしすぎたんだよ。これからは優しくするね。パパ」

普段はおいとかねえとかで人を呼ぶくせに今日はパパだなんてどうかしてる。

疑問を抱えたまま眠る。
どうせ明日になればまた元通りだ。

目覚めると飯を食い、ゴミ出しをし、行ってきますと部屋の中に声をかけると妻と娘から両頬に片方ずつキスをされた。

「パパ、あなた行ってらっしゃい。はやく帰ってきてね」

全くおかしなもんだ。今まで嫌われていたのに今度は異常なくらい好かれている。

ことあるごとに匂いを嗅ぐ行動が気になるが、それよりも何よりも好かれるのは悪い気はしない。

会社での扱いも嘘のように変わった。

「江川さんっていい匂いね」

そんなことを言われるようになった。

次第にいつも気づけば人がそばにいるようになった。

最初のうちはいい気分だった。だが四六時中誰かと一緒というのも鬱陶しくもある。

人混みを避けるように逃げ回る日々。
家にも帰らなくなった。人に遭いたくなくて街を出た。

貯めたお金で食料を調達に久々に町に帰ると人の死骸の山だった。

生き残りの人間がいたのでどうしたのか?と声をかけると

「どうやらこの街にウィルスが蔓延したらしい。あんたは大丈夫なのか?」
2016/10/05 15:10

[809] 魅惑の体臭A - どるとる

「なるほど、この匂い。あんたが原因か。おそらくあんたが街を出たあと残り香のようになったウィルスが街を汚染したんだろう。このウィルスは効くのが遅いらしくただの甘い匂いでそれが次第に酸っぱい匂いに変わるんだ」

慣れてしまったからなのか気づかなかったがなるほど男の言うように酸っぱい匂いがあたりに立ち込めていた。

男は早く人のいない場所に行けと言い終わると死んでしまった。

とり残された江川は一人スモッグのようにピンク色に汚染された雲が浮かぶ空を見上げ一人声も立てず泣いた。
2016/10/05 15:14

[810] GOKIBURI撃退プロジェクト - どるとる

日本 東京
現在時刻 PM8時

高級マンションに住む大仁田瞳。テレビを観ているとカサカサという音がした。

やつだ。やつが来た。黒い悪魔だ。

スプレーを手に隙間に追い詰めて噴射。
しかし、奴等もばかじゃない。
ちゃんとこちらの手の内を知っている。
羽根で飛び回り囮を使って背後から奇襲をかけるつもりだ。

しかし、こちらもばかじゃない。奴等の行動パターンはお見通しだ。何時間にもおよぶ戦いの疲れが出たのか奴等の動きも鈍くなった。

これでしばらくは休戦。

しかし、戦いはまた始まる。
スプレーを二個に増やし奮闘する。

やがて、戦いはヒートアップしていく。
迷彩服に着替えた彼女は改造したモデルガンを手にする。
ガス銃が原因で引火し、部屋中が火で包まれる。
マンション中がパニック。

やがて到着した警察と消防に取り押さえられた彼女は開けたままの部屋のドアからゴキブリが飛び立つのを見た。

「チッ、まだ生きてやがったか」

彼女とゴキブリの戦いは続く。
2016/10/09 22:00

[811] 和の侵略 - どるとる

(愛国心規正法)が制定されてからこの国は変わった。
今までは外国の文化を柔軟に取り入れた多国籍文化といっても支障がない自由な国だった日本も今は無き古きよき日本の文化を取り戻そうと民間人への愛国心の強要を政府は命じた。

それに従わない人間には重い罰が与えられるようになり久しい。

すでに何人もの人間がその理不尽な規正法で処罰されている。

食事のマナーから挨拶の仕方まで様々な日本文化を無理やりに学ばされる。

洋服さえ着れない。和服か着物以外は着用してはならず、日本語はすべて江戸弁に矯正された。

御用、御用と提灯をぶら下げた奉行所の連中が髷をして法律違反者を追いかける。

やがて法律違反者は取り押さえられて連れて行かれる。

その国の法律に嫌気が差した馬渕はアメリカに逃げた。

うまく逃亡に成功したが、そこにあったのは日本と同じくアメリカン精神に支配された西部の開拓時代のような街だった。

唖然とする馬渕。
すると後ろから何者かに撃たれた。

気づくと天国にいる。
やっと文化から解放されると思ったのもつかの間、天国でも独自の文化があり再び馬渕は文化の檻に囚われるのだった。
2016/10/10 19:08

[812] 生存者 - どるとる

男は突然強烈な光に包まれた。はっと気づくとベッドの上だった。

たくさんの機器に囲まれた部屋の中にいて周りには防毒服のようなものを着たたくさんの人間がいた。

「ここはどこだ」と聞くと、
君は最後の生存者なんだと言われる。

訳のわからないでいると防毒服を着た一人がマスクをとった。

その顔は人間ではなかった。

詳しく聞くと、爆弾が落とされ自分以外の人間は全員死亡したという。

ただ、なぜ自分が助かったのかはわからないという。

我々はあなたを助けた恩人だと話す。

疑わしかったが信じるしかない男。

再び急にまばゆい光に包まれた。

頭の上に巨大な爆弾が落ちてくる。

「俺は最後の生存者じゃなかったのか」
2016/10/10 19:30

[813] 旨すぎる水 - どるとる

主婦である横川は水が好きだった。
だが水ならなんでもいいという訳ではなく好みのミネラルウォーターがあるのだ。
ただ、その日はどこに行ってもそのミネラルウォーターがなかった。

コンビニ、スーパー、酒屋まで思い付く場所は行ったのだがいつもなら簡単に見つかるはずの水がどこに行ってもない。

病みつきという言葉があるが、麻薬のように依存してしまうと何がなんでもそれをほっしてしまう。彼女は水がその依存の対象なのだ。

仕方なく家に帰った彼女は水道水を飲もうと蛇口をひねる。

コップに水を注ぎ、ごくりと飲み干すととても旨い。
あのミネラルウォーター以上の味わいだ。
きめ細やかな喉ごしと今まで飲んだことのない新しさを感じる味に彼女はすぐに病みつきになった。
一杯、また一杯とコップに水を注ぎ飲み続けた。
狂ったように飲み続ける彼女。

翌日、マンションの部屋で女の遺体が見つかる。彼女の家族が訪れた際に見つかったのだ。
不思議なことに遺体には水分が一切なくまるでミイラのように痩せ細りカラカラに乾いていた。
傍らには空のコップがひとつおかれていたという。
2016/10/15 22:19

[814] 夢の戦争 - どるとる

突然の爆撃が辺りに響いた。
爆煙と炎が周囲を包みなにかが焼けるような臭いが鼻をつく。

「また戦争が始まったらしい」

軍事マニアの仁科は七回連続で同じ夢を見ていた。

最初は2ヶ月まえ、覚えのない場所で一人戦地で敵と銃撃戦を繰り広げる。

外国なのか英語で書かれた看板が目立つ。

目覚ましの音で目を覚まし、また再び夢から解放される。

今夜もまた見るのだろう。残業から帰った仁科はコンビニで買った弁当を平らげるとそのままの格好で寝てしまった。

気づくとまた夢の中にいる。
そして再び朝になり会社と自宅の往復。

テーブルにあるカレンダーを見ると11月2日とある。

夢の境が最近曖昧になっている。
そんな気がした。

会社に行っている自分と戦地で戦う自分。
現実と夢が混ざりあい時々どちらが夢でどちらが現実なのかがわからない。

だが戦地にいる自分は夢のはずなのだ。
やがてリストラに遭い会社をクビになってしまった。
家族も頼る友人もいない仁科は途方に暮れた。
仁科は有り金で一本のロープを買い誰も通らない林道にある木にロープを結わえ首を括る。
不思議に苦しくはなかった。

ふいに目覚ましの音に目を覚ます。
11月2日。

これで何度めだろう。首をいくら括っても死ぬことが出来ないのだ。また再びあの夢を見たいのに自殺を繰り返すばかりでまたつまらない現実に引き戻される。

「現実なんてつまらないじゃないか。俺は永遠にあの夢の中で戦争をしたいんだ」

そして仁科は何億、何兆回と自殺を繰り返している。

木にロープを結わえつけてそのロープの輪に首を通す。
やがて痛みのない安らかな死がやって来る。

自分に死が訪れるわずかな希望を抱いて死ぬまで仁科は自分をころし続けるのだ。

けっして終わることのない果てしない戦争のように。
2016/10/15 22:39

[815] ツキすぎた男 - どるとる

天野は昔から運がいい。
福引きをすれば必ず一等が当たり、懸賞に応募すればかなりの低確率でも当たる。

商店街の福引きで当たった景品を手に彼は自宅に帰りつく。

思えば小学生の頃、ヒーローのカードは買えば必ずレアカード。
どんなどしゃ降りの雨でも一歩外に出れば嘘のように降りやんだ。
だからか周りにはまるで神童のように扱われた。

部屋には懸賞などで当たった沢山の品々が山のようにある。

たまには外れてみたいな。
そんなことを考えるようになった。ツキ過ぎるのはやはりつまらない。
順調な人生はいい。しかし順調過ぎる人生はただ退屈なだけだ。

たいして勉強もせず難関大学に合格し、上々企業に勤める。

ただそれも昨日までの話だ。
自らツキを手放してみたらどうなるかが知りたかった。

わざと貧しい暮らしに身をおくことでツキからも解放されるのではと思った。

しかし、無駄だった。金持ちの養子の話が持ち上がり、自分はいつの間にか成金になってしまった。
再び、金と欲の生活に舞い戻ってしまう。
やがて養父が亡くなると使いきれないほどの財産が残ってしまった。

彼はこんなところにはいられないとすべての財産や家、株にいたるまでを慈善団体などに寄付し、自分は夜逃げ同然に家を出た。

その道中、どこに逃げるかと思っているとふいに空からお金が落ちてくる。
札束がひとつ、ふたつ、みっつ。

なんだあと空を見上げると沢山の札束が落ちてきてあっという間に札束の山に埋もれてしまった。

翌日のニュースで現金輸送のヘリから誤って数億円の札束が地上に降り注いだというニュースが流れた。
なお、この事故での被害者は一名おり、東京都在住の天野広明さん。天野の笑った顔写真が画面に映る

「ツイてるなあ、この人。札束に埋もれて死ねるなんて」

電気屋のショウウィンドウのテレビに向かって下校途中の小学生二人が言う。
2016/10/17 12:37

[816] 頼りになる人 - どるとる

三木は、人に頼られたことなんて生まれてこの方なかった。

しかし、ある日を境にして変わった。
周りの見る目が変わったのか頼られているのに自分が気づいてなかったのか。

やたら頼られるようになる。
半ば雑事を押し付けられているような気もしたが、損ばかりしている訳ではない。頼られるからにはそれなりに見返りがあるのだ。

会社の飲み会の幹事を任されることになり乾杯の音頭をとる。

「カンパーイ」

気持ちよい酔い加減のまま帰路につくとすぐに寝てしまい夜が明けた。

「三木さんは頼りになるわ。とにかく頼りになるわ」

給湯室での会話に聞き耳を立てる。
全く人生とは不思議なものだ。
頼りにされていることがこんなにも気持ちがいいとは。

ある日出社後部長のカツラを誤ってとってしまう。

怒られるかと思ったが、部長は笑って

「つんつるてーん」

普段は真面目な部長がおどけて自分の禿げ頭を指差してギャグを飛ばす。

そのとたんにオフィスに笑いが渦巻く。

「あんなに笑われたのははじめてだ。君のおかげだよ。ありがとう。やはり君はわが社の星だな。頼りになるねぇ」

そんなふうに言われた。

友人の江原の誘いで飛び入り参加した合コンで知り合ったユミはとても可愛かった。

いつの間にか付き合うようになった。

自分には申し分ない女性。

しかし、ある日とんでもないことを頼まれた。

「お願いがあるの。私のかわりに死んでくれない?私、自殺したいのだけど怖くてできないの。だからあなたが死んだのを見届けたら私もあとを追って死ぬから」

そんなことを頼まれた。しかし、いくらなんでも死んでくれと言われて死ぬわけにはいかない。

断ると、態度が一変

「頼りにならない人ね。もういいわ、さよなら」

そう言ってユミはそれ以来連絡ひとつ寄越さなくなり、その日以来頼られることもなくなった。
2016/10/18 12:33

[818] 水源 - どるとる

砂漠で倒れる男。

蜃気楼なのか。目の前に蛇口がひとつ。少し迷いながらも蛇口をひねる。

幻でもいい。死ぬまえに水が飲みたい。

やがて男は水を飲むたびに体が痩せ干そっていく。
カラカラに乾いてミイラのようになってしまう。
水を求め蛇口をいっぱいまでひねるも蛇口からはもう一滴の水も出ない。

蛇口から絶え間なくあふれる水。それは自分の中にある水分だった。
自分の体内の水分がなくなれば蛇口からあふれる水もなくなる。

それに気づく間もなく男は死んでしまったのである。

2016/10/20 17:11

[820] - どるとる

野久保は昔からツキには縁がなく自分には運がないなんて思っていた。しかしある日を境に運気が急に上がった。

パチンコをすれば出まくるし、競馬をすれば万馬券。

商店街の福引きをすれば一等。

野久保はその日からまるで見違えるような生活を送る。

しかし、やがて野久保の元に神様と名乗る老人が現れる。
老人によるとある人物に運を与えたつもりが間違えてあなたに運を与えてしまった。こちらの手違いとはいえ不服ではあろうが今まで使った運はお返し願うほかはない。

そう言うのだがしかし返せないと言い野久保は神様を追い返してしまった。

仕方あるまいと神様は野久保の命の火を消した。

晩年26歳
野久保は短い生涯を閉じた。
死因は突然死だった。
2016/12/08 12:16
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