詩人:ハト | [投票][編集] |
全て誰かのせいにして
泣きながら嫌いだと
罵ったこともありました
それは私が
子どもだったからです
生まれた意味や
運命なんてものを
一人前に考えてみたりしました
それは私が
子どもだったからです
何故生まれたのか
何故私なのか
考えたところでそれは
後付けの
都合のいい解釈でしかなく
そんなことも分からなかった
それは私が
愚かな子どもだったからです
何故と聞いていればいいだけの
易しい易しい世界にいた
愚かな愚かな
子どもだったからです
しかし
はっきりしていることも有ります
それは私が
仕方なしに生まれたのではなく
望まれて生まれたということ
それだけ分かれば
充分幸せだと
そんな気がするのです
それはやはり私が
愚かな子どもだからでしょうか
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洗濯物を干しながら
車庫の中で見付けたそれは
おじいさんの麦わら帽子
暑くなるとそれをかぶって
首にタオルを巻いて
田んぼへ畑へ
私が小さいころは
前の夜に約束して
朝は五時に起きて
ケイトラの後ろに乗って
朝露に濡れる苺を取りに行った
見付けた麦わら帽子
それはおじいさんの名残
ざるに入った苺を見ると
今もあの朝を思い出す
それは名残の麦わら帽子
今年は誰が
スイカを育てるのでしょうか
それは名残の麦わら帽子
今年は誰が
稲を刈るのでしょうか
それは名残の麦わら帽子
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あなたは
夜になる前の紫
静かに燃える炎のように
黄昏にうなだれた私を
やんわりと包んでくれる
あなたは
夜になる前の紫
天幕をそっと降ろして
脅えなくてもいいのだと
丁寧に諭す
あなたは夜になる前の紫
世界の全てを
美しくしてしまう
魔法の色
あなたは夜になる前の紫
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この川の側に生まれ
この川の側に生きて
君と共に見たあの景色の
何と美しかったことか
銀色の魚が翻り
金色の夕日が溶け出し
明滅する蛍に誘われ
月の光は遮られることなく
私たちを照らしてくれた
君と共に居たあの時の
確に私は幸せだった
この川の側に暮らし
この川の側で生きる
あの頃の私たちの
何と輝かしかったことか
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私を形作っているのは
私にとっての
あなたや君や
あの人やあいつ
そしてあの日の私たち
いろんなものが混じっていて
いろんな要素で出来ている
結果論でもいいんですよ
大事なことは
私を私として
認められてるかと
そういうことなんですから
嬉しいんです
笑いたいんです
泣きたいんです
ただ満たされています
私を作るレシピには
あとはどんなものが書かれているのでしょうか
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殻に閉じ籠っても
中身は空
振ればカラカラ音がする
転がる何か
干からびる何か
何かとは何か
それは言葉か
はたまた心か
一枚一枚剥がしてみれば
きっと中身は空なのでしょう
風に吹かれれば
重さを失って
ころころころりと
飛ばされるでしょう
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柔らかくのびる緑や黄緑
同じリズムで流れ続ける
清い水さえ
あの日と何ら
変わりなく見えるのに
一人で佇む今現在の
この切なさは何なのだろう
振り返って後ろを見れば
すぐそこには君の家があり
少し目線を上げるだけで
君の部屋のカーテンが
緩やかに波打つのが見えるのに
一人で佇む
この切なさは何なのだろう
何一つとして
見える景色は
何一つとして
変わってなどいないように見えるのに
一人で佇む今現在の
この切なさは何なのだろう
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君がこの
素晴らしい景色を見て
はしゃぐように
同じように
はしゃげるようになりたい
君が音楽に合わせて
体を揺らすように
同じように身を
委ねられるようになりたい
君と
同じ色を見て
君と
同じ音を聞いて
君と
同じものに触れていたい
どんなふうに
色を見ているの
どんなふうに
音を感じているの
どんなふうに
見えているの
私を含めた
この世界は
君の映る
この世界はとても
この世界はとても
とてもきれいです
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部屋の中
私とあなた
いきをする
あなたがすって
私がはいて
私がすって
あなたがはいて
音楽すら
奏でられてしまうよ
ここらでちょっと
換気をしよう
誰かがすって
誰かがはいて
みんなみんな
いきをする
それぞれが
奏でている
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電車のなかで
ふと気付く
この人はなんて
なんてきれいな
ひざこぞうをしているのだろう
それに比べて
ジーンズに隠れた
私のひざこぞう
子どものころ
しっかり前をみて歩けなくて
転んで泣いてばかりいた
私のひざこぞうは
所々色がかわり
転んで泣いてばかりいた
私の向かいの席に座る
きれいなひざこぞうをした
この人は
もしかして
転んだことなど
ないのだろうか
それに比べて
ジーンズに隠れた
私のひざこぞう
不意に重なる手が見えて
薬を塗ってあげようね
しみるけど我慢してね
不意に重なる手が見えて
ああ
あの人は元気だろうかと
懐かしい気持で
一杯になりました