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千波 一也の部屋  〜 投稿順表示 〜


[729] 二十三夜
詩人:千波 一也 [投票][編集]


降りそそぐものは、波です


満ちてゆく潮風に

しおれることも

ときには

開花



白銀は、あこがれですか

うらがわですか


ゆるやかになきます

あの、下弦




背中をなぞることが窓、でした

やわらかな胸には

皐月のあやめ


あやめ、てからまり

さきほこる、つの

たつ、みさき




ゆくえを問う耳が

海鳥なのかも知れない、と

かごはねむります


揺れてねむります




色濃いゆめを光にかくして

牙をはじらう

鱗のよる、


みな、も欠けてはいませんか




降りそそぐものは、波です


あたらしく使い古すたびに

舟のきしみが透けてゆきます、




音色はこども

いつまでも、こども




孤独にふれたなら

あふれてゆくのが涙です


迎えても

さらっても


2006/12/27 (Wed)

[730] いのちの音階
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こぼれ落ちる涙に

いとしさを聴く


ときには

いらだちを聴き

いたずらもいましめも聴く




わたしたちは温度を知っている


あるいは

温度の選択を知っている




 ことばの川にひたす手は

 ぬくもりに濡れるだろうか

 それともつめたく


 流れの先には海が待つ

 みえることと

 みえないこととは

 同じことかもわからない


 意味深に

 潮騒は鳴りつづく




こぼれ落ちる汗に

耳を澄ませているのは

水のいのちかも知れない



こぼれ落ちる雨はきょうも

そらより狭く

閉ざされて




 すべての温度をすりぬけて

 水にふれたい

 純粋に


 飲み干すものがことばなら

 わたしたちの渇きに

 終わりはない




いのちの音階を辿るなら

すべての温度をすりぬけて


たとえば笛の

かなたの笛

まで



2006/12/28 (Thu)

[731] 盗まれてしまう九月
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朽ち果てようとする一枚の葉に

思い出します、

たいせつな

いろ



寒さがつのりゆく風のなかで

あらゆるものを踏みつけて

あらゆるものに火を放ち


暖まるすべは

そのすべもろともに、燃やし尽くして


震えるからだを、いま

北、がかすめてゆきました



わたしの九月は枯葉のなかです


しずかな雪の汚点のように

この手に取れば、

散ります

寝息は



短い一言だったのかも知れません

なにごとも



確証がないばかりに

真冬の星空はこんなにも澄んで、

そっと押されてしまいたい

背中です



静寂を破るものは頼りなさ、

足音も

曇る吐息も

おかえりなさい、

そうしてすぐにもお別れです



こころから遠いものたちに

戸惑う素顔を描けません、

いまは、

まだ



ねがいの痛みに隠れた分だけ

盗まれてしまう、

九月です


知りゆけば、

なお

2006/12/29 (Fri)

[732] たとえばなし
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たとえば空が

海から生まれたものだとしたら

鳥はおよぐものたちで

魚は羽ばたくものたちです



たとえば光が旅人ならば

わたしたちも、風

無理のない

ながれ




 吹雪は

 ゆめの国からの使い、です

 ことばを閉ざされたくちびるには

 けがれなき白、

 ほら

 思い出しませんか、

 甘いクリームあるいは

 シュガー


 熱を取り巻くものは

 いつも熱ですから

 たやすく迷える

 羊です、

 みな




もしもあしたがまぼろしならば

おそらくきのうも同じです

いま、と

なぞった瞬間に

すべては過ぎ去ってしまっても

未だ来ない、

未だ来ていない誰かを信じて

待つ身はいかにも

ゆたか、です



たとえば鏡が逆さまだとして

星空を射る瞳は

直線



ともに

いくつもうたいませんか


足りないものを足りないままに

それでもせせらぐ

このときの

瀬に

2006/12/31 (Sun)

[733] あおの馬
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照る岩に

砕かれてゆく波のうつくしさ

それはもはや

言葉には乗ってゆかない

冷たい、というわけではなくて


いつからか

鋭いものが岬だとおもっていた

まるくても

まるくなくても

海風が通る、それだけでいい

岬に立てばよくみえる



 ねむっていたものを

 呼び起こす、夜明けに吐息は

 だれかをつつむ

 だれかのねむりを

 しろく、隠す


 朝は遙かにうたがわしい

 それゆえ夜は、

 満水のそら


 落とされまいとする非力さを

 確かめ合うおこないが

 時刻という名の傷

 やわらかに灼ける、髪

 草原さながらに

 みがかれて

 ゆく波



数え足りてしまうところまで

かえっておいで、と

陽射しはいつも

逆説的にとける


走っておいで、

戻っておいで、

瞳の向こうでささやく種火


たてがみに揺れる、季節は

あおくいなないて


2007/01/01 (Mon)

[734] 六番目の季節
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はるをいたみながら

ひとつ、指を折り


なつのまよいに

迷えないまま

指折りは、

ふたつ


みっつ、を数える指には

こころならずも

あきがなついて


ちからずく、のような

諭されているような

圧倒的なふゆが

指を折る、

よっつ



なすすべもなく

いつつめの指は折れ、

握りしめることの頼りなさは

今もなおここから近い


それゆえに

つぎの数をもとめるけれど

閉じられる指は

とうに無い


もともと

わかっていたことかも知れない



えがおの意味は

必ずしもひとつ、ではなく

過ぎ去る風に

なにかを

託す、

あかるい断崖


ここは六番目の季節


そっと

開かれてゆく

まもり、の季節


2007/01/02 (Tue)

[735] ひかりみち
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みちは

みちゆく

いろみちる


 こみち

 ちかみち

 ぬかるみち


 よみち

 あぜみち

 けものみち


さざなみちかきは

かみちぎる

そら


もゆるみちのはて

よみちがう

いと



  ひなまつるにわ

  かぞえばな

  りきみつまどう

  みなものうつわ

  ちがさくら


  ひかりみち

  わがみちらざり

  みちび

  かれ



みちは

みちゆく

くにみちる



 かざみ

 ちちはは

 うみちとせ


 このみ

 ちいさき

 やまかぶりつつ



みちしるべとて

あおぐみちから

まつひは

まどか


みちゆくみちに


2007/01/03 (Wed)

[736] ゆきおんな
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優しさの

定義の途中で

悲しい君を抱き締めた


何度も何度も

抱き締めた



 放熱温度は数千

 おそらく加護には不向きな温度


 僕は何もかもの途中だった



汗をにじませていたのは

快楽のつめたさ

いまなら、

わかる



気づかれないよう震える僕に

あの日の君が溶けてゆく



 どんなに

 真っ白な雪が降ったとしても

 あたらしいものとは思えない

 ふるいもの、とも

 呼べないだろう


 あれからながく

 いまから、

 ずっと



たたずむ木立はさながら炎


動き続けてゆく真冬に

どこまで吐息は痛むだろうか


2007/01/04 (Thu)

[737] そそり上手
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謎めいた言葉の

ひとつや

ふたつ


もどかしい仕草の

みっつや

よっつ



わたしは恋に不慣れなもので

五万の毒を盛るかも

知れません


けれど

百戦錬磨のあなたのこと

上手く分別なさって下さい


良薬は口に苦し、と云いますものね



嵐も

月夜も

ものがたり

雀も真珠も絵巻物


散らした熱に

映える、あなたです

とどまるあなたを慕いつつ


どうか

くちづけを

数えたりしないで下さい


つまるところ、

なみだの受け皿は

わたしだけなのですから


そら、おやすみなさい


看病の腕前には

それなりに自信があります

氷枕を保って差し上げましょう


揺れる火のように



2007/01/05 (Fri)

[738] 未練
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 何かを誤ったがゆえ、

 むかしの恋



目の前の誰かに

幸せの顔を見つけるとき、

それはそれは大した語り口ですが

幸せの顔を

みとめるとき、

ふと

きみを懐かしむのは

未練でしょうか


何かを誤ったがゆえ

むかしの恋



 枯枝を転がす、陽

 そこには真夏があるような
 

 砂上を逃げる、かぜの円

 そこから喉が

 乾いてゆく

 ような


 欲しかったものと

 欲しくないものとは

 なんだかとても似ています


 ただなんとなく

 否めてはみるけれど


 ふと

 きみを懐かしむのは

 未練でしょうか



目の前の誰かに

幸せの顔が灯るたび、

夕日はあかく

なおあかく


成り立つものに謝るさなか

その背はあすを迎える為にだけ

ただ、


2007/01/05 (Fri)
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