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千波 一也の部屋  〜 投稿順表示 〜


[1183] やさしいきつね
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なにかが見えなくなりそうで

やさしいきつねは

雨をきらう


なにかが聞こえはしないか、と

やさしいきつねは

雨をしたう


その

ときどきの気持ちにまけて

やさしいきつねは

雨をいろどる


今夜のねどこと

ごちそうをうたいながら

やさしいきつねは

雨をみる




2012/11/23 (Fri)

[1184] 秋・絢爛
詩人:千波 一也 [投票][編集]


だれに

味方をするでもなく

秋はしずかに燃えている


わたしが

ひとを敵視するのは

燃えようとする

哀しい加速


はなはだ容易い

弱さの

露呈




いっそ

水になれたら

けなげだけれど


わたしは

凍りとがるより

能がない




まして

小石のように

一人で空を仰げはしない


きっと

すぐにも駆けだして

ささいな拍子でつまずくのだろう


風の底から

空をおもいだすのが

やっとだろう




語り尽くされても

なお絢爛豪華な

緋のほとり


わたしはちいさく

くすぶっている


余されるほどでもない

身勝手さで




2012/11/23 (Fri)

[1185] この指とまれ
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まじないめいた

隙間がすきです


ほほえみきれない

ほの明るさも



あしたはぼくを

待ちますか

おんなじ思いの

きみですか



危ういそぶりの

ゆるしがすきです

疎遠すぎない

よこがおも



名前はなくても

抱きしめられます


形がなくても

追いかけられます



約束は

ぼくを向きますか

きみの望みが

かさなるならば

この指とまれ、背中から



この指とまれ、音もなく


2012/11/23 (Fri)

[1187] アンドロメダ
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おそろしいものに

心あたった朝、

月は

黙って

灰色でした



わたしの言葉は

薪のようです

誰かの夜を

あたためうるならば、と

みえない炎を

見つめかねながら

よけいに

沈黙できず



疲れ果てた羽のような

雲のむこうに、

わたしを待たない

時計があります


手をかざし

よけいな光を

さえぎるけれど

いまだに

銀です

かろうじて。




やさしいクリームの

裏側は、海


自覚の深い

禁忌の海




つながれた総ては

二度と解かれません


みんな、

すてきな雨粒ですね

波にあらわれながら

孤独に帰りますね

みんな




闇を仰いだ

幾度めかのまよいに、

うたは

すっかり

染み付きました



C.Q.

C.Q.

わたしですか

ここは


わたしですね

そこも




凍てつくものたちに

したわれた朝、

あらたな破片が

澄んでいました


嘘もちぎりも

凌駕して




2012/11/23 (Fri)

[1188] ふ・た・り
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つぼみのままで

いたいなら、

それも花だと

そよぎましょう



まだとけきらない

雪の小村も

あなたが

春だと云うならば

うなずきましょう

わたしは細く



暗く、

おもたい横顔も

あかるい星の

通りみち

わたしは黙って

見つめていましょう

ねがいを

きっと、託しましょう



やさしさだけが

取柄だ、と

いついつまでも

わらっていましょう

つよさ、の意味が

訪ねてくるまで



ふれた指から

はじまる笑みなら、

そこに

言葉があるのでしょう

読めないものも

聴けないものも

迎える日々が

愛、なのでしょう



とまったまま、で

いたいなら

それも風だと

うたいましょう

あなたの背中で

憩いましょう



2012/11/26 (Mon)

[1189] 夢なかば
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のぞまれない悲しみは

きっとある

のぞまれない優しさも

きっとある

ひとつ残らず

のぞまれなくても

わたしはここに

立っている



言えず終いの

いたわりがある

言えず終いの

いつわりもある

言えず終いが

わたしのくせなら

つぎこそ言おう、と

思いはつづく



空には流星

知られていても

知られなくても


海には汽船

聴かれていても

聴かれなくても



さびしい明日はきっと来る

まばゆい明日もきっと来る

わたしが

わたしを辞めないかぎり

明日の意味はわずかに

重い



叶えられない温もりが

ある

叶ってしまう冷たさも

ある

まちがえた数ばかりが

わたしを為さぬよう

わたしは呼吸を

かさねてる



2012/11/26 (Mon)

[1190] 淡雪
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手のひらを

つかのまだけ

離れてみせる、と

誇らしそうに安らいで

黒髪すやすや

あなたの隣



小鳥の言葉は

拾ってきます

かけらに

なり果てる手前の

懐かしい小枝など

遠慮がちに



十一月の

曇り窓には清い川

恥じらいも、強がりも

ひとつになって

したたって

船旅はやわらかです



すぐにも翻る

颯爽とした陰と親しめば

雪は上手に

乾くのでしょう

肩にも髪にもさわらずに




2012/11/26 (Mon)

[1191] 約束の歌
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見上げる星よ、きみであれ

痛ましいほどに
疑いようもなく
きみであれ



忘れてくれるな、
燃え盛る目を

忘れてくれるな、
恥じ入る肩を



かろうじての言葉が
きみだった

誰をも
けっして裏切らない
すべてだった



命懸けで
信じていられたか、

いまでもきみは



遠く、はるかな一等星よ
きみであれ

届かなくても
呼べる名であれ

この胸にあれ


2013/02/06 (Wed)

[1192] 明日の色
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明日の色は
だれにも見えない

必ず見えない



もしかしたら、とか
うまくいけば、とか

思いを
重ねれば重ねるほど

夜は深く染まって
真っ暗だ



明日の色が見たければ
明日を待つしか
手立てはない

そんな
単純な難しさには
眠るよりほかに策がない



赤子なんだね
だれもみな

いくつになっても
いくつかわすれても

目覚めたところから
はじまり続けるよね
だれもみな



明日の色がわかるなら
昨日も今日も
無色だね

涙も笑みも
偽りにしかならないね



明日の色に
思いを馳せて

うまく添えたら上出来で
大きく転けたら良い試練



言葉の数が増えたなら
色にも詳しくなったでしょう

半端な姿勢は
逃げたがり

逃げるものには
明日など来ない

必ず来ない



春、夏、秋、冬

四季を渡って
暮らしていましょう

大なり小なり
変化に富んだ毎日を



明日の色を言うまえに
明日を迎える支度をしましょう

くたくたになって
すやすやと落ち着いて

待つことの難しさに
抱かれていましょう


2013/02/06 (Wed)

[1193] 継ぎうた
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晴れわたっていなさいね
かなうのならば、
かなう限りは

おまえの空を
喜びなさいね



馳せてゆきなさいね
どこまでも
どこまでも

たやすく
他人を切り捨てぬよう
大きく、大きく、
尽力なさいね



咲いていなさいね

おまえの
愛でる花が咲いたら、
それからさきは
香りなさいね



耳を
すましていなさいね

聴きたいことは二の次に
聞こえることを第一に

とおく、から
近しいものでありなさい



かぞえていなさいね

おまえの指が
頼りなくても、
だれだって同じ
なにもかも同じ

安堵とため息を
繰り返していなさいね



幸せになりなさいね

ほんとの意味も
いつわりの意味も
すべてはおまえの
手のひらのなか

ささやかであっても
温もりに守られていなさいね



つながっていきなさいね

いつか
わたしは遠くなるから、

そうなるまでに、
生を受けたもの同士
けんかなさい
笑み合いなさい



うたっていなさいね
春を告げたり
冬を畏れたり

さびしい理由がわかるまで
愛しなさいね、
愛されなさいね




2013/02/06 (Wed)
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