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千波 一也の部屋  〜 新着順表示 〜


[1169] 告げぬひと
詩人:千波 一也 [投票][編集]


こころが優しいのは

告げぬひとです

こころが美しいのも

告げぬひとです


そう

教えられたから

わたし

告げずにきたのに


こころが汚いのは

告げぬひとです

こころが冷たいのも

告げぬひとです



2012/11/23 (Fri)

[1168] みあげる
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だまっていたら

うつむいてしまうので

みあげる


うつむくことは

わるいことだと

ひとりで

おぼれて

しまわぬように

みあげる


そこに

すくいが

なくてもいいから、と

かたむいた

おもみの

ぶんだけ

みあげる




2012/11/23 (Fri)

[1167] 蜘蛛の子
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いつもの小屋の入り口に

その蜘蛛はいた

わりと小柄で

さほど気持ち悪くはなく

タバコの煙を吹きかけながら

逃げ去るさまを

愉しんでいた


正午の陽射しが

いくらか涼しくなった今日

いつもの小屋の入り口に

その蜘蛛はもう

いなかった


代わりにいたのは

二匹の蜘蛛の子


入口の戸の隅っこに

こぢんまりと張られた

蜘蛛の巣がある

こぢんまりでも

何かを守るように

しっかりと張られた

蜘蛛の巣がある

その奥に

大切そうに並んでいたあれは

卵だったのだと

ようやくわかった


親蜘蛛は

居場所を変えたか

他の虫のえじきとなったか

寿命が尽きたか

定かでない

蜘蛛の子の

忙しそうにうごめく姿だけが

ただただ定かで

タバコの煙が

線香めいて揺らめいたことの

真相もまた

定かでない



2012/08/31 (Fri)

[1166] 夏風邪
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いまごろ

どうして、って

尋ねられても

呆れられても

かかったものは

しかたがない

恋だっておなじ

冒険だっておなじ

一過性だよ、って

かるく流されるのも

流されまいと

あがくのも

おなじ

あこがれも

たそがれも

疲れ切るのも

眠りたおすのも



2012/08/31 (Fri)

[1165] に、じ、む、
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遊覧船は雨もよう

縫い針さながら森はしずかで

昼間の月は紙片を降らせる

絵になれない陰はどこにもないから

わたしはひそかに呼吸する



2012/08/31 (Fri)

[1164] 水の靴
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そらを

見あげる

銀のあしもと

繰り返される風の名は

誰にも帰らぬ物語

おだやかに

おだやかに

波が

陸へと続く約束を

やさしく迎えられたら

いたみも同じく

呼べるだろうか


素足を

よろこぶ

傷たちの群れ


主人となって

それを履けたら

夜はひとすじ

晴れてゆく





2012/08/31 (Fri)

[1163] 水と油
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水と油は

反発し合う

反発するから

互いが成り立つ


水と油は

こばみ合う

こばみ合いつつ

となり合う


水と油は

よごれ合う

よごれ合うから

澄み分けてゆく


水と油は

交わらない

その交わらないことに

正しさがうかぶ


2012/08/31 (Fri)

[1162] 即位
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王冠は

かぜのなる楽器

ひかり

まばゆい宝石は

言葉のむこう、

時間の

思惑


暗君をわらう重鎮たちは

きれいなよるの鋭角に座して

姿をもたぬ姿を

悦ぶ


進言は

砂上のきわみの

まぼろしの





装束、奏上

庭園、奏上

隷属、奏上



刀剣は

まつりのあとの鏡文字


ひとり

うたがう栄光は

孤独のむこう、

凍てつく

透度で

護られて










2012/08/31 (Fri)

[1161] 子犬のように
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子犬のように

こまっています

愛されかたがわからずに

しっぽを揺らせて

こまっています



子犬のように

無邪気でいます

邪気を

吸っても

無邪気でいます



子犬のように

ねむっています

日なたの

ゆめが消えないように

ねむっています



子犬のように

したっています

愛されかたが

わからなくても

愛することがぬくもるように

したっています




2012/08/30 (Thu)

[1160] 正直者
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おのれの為のすべは皆

正義に反するか

いつわりか


他人を一切欺かないなら

おのれを騙すことは

正解か


おのれの為に溢れる涙は

憚るべきか

醜態か


他人の傷をつくるなら

おのれの痛みは

秘匿すべきか


美しくなどないものを

讃えることは

大器の証か

教養か


おのれの欲するままに

歩んでゆくのは

無知の証か

幸いか


他人が欲しがらぬ一切を

一身に背負うのは

孤独か

華か


わからぬことを放るのは

無上の恥か

傲慢か


正直に

すべてを語れば健全か

明るみか




2012/08/30 (Thu)
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