詩人:千波 一也 | [投票][編集] |
華やぎなさい、
ささやきに
背中は砂なのでしょう
どうしたって、もう
無音でいられずに
並ぶのでしょう
嘘でも良いではありませんか
道なき道があなたです
それを飲み込む
わたしです
少しの違いがすべて、ですから
畏れることにも頷きます
が、
やぶれることなど
ありえません
どうぞ、
おやすみください
そろそろ魔術にしませんか
ひとつだけ、
裏切るように
水音の
なか
てさぐりの
硬さ、を響いて
満足そう
に
ゆるやかですね
寒さを運ぶ船出の夜は
浅く
とらわれていようかと
ふけてゆきます
杖のかたわら、
乾きにすがり
瞬きもせず
詩人:千波 一也 | [投票][編集] |
こぼれる匂いに
転がるよるに
企んで
膨らんで
それがつまりは
ほほえみで
真顔にあふれていくものは
つややか、な
ひみつ
ふれて
ふるえて
ひたむきに
皮一枚、をたいせつに
して
にがてなものに
抱きとめられたら
ゆっくりでいい
やぶいて
みせて
それが
こころを
弾ませるから
しぶきをあげて
なついていく
から
やわらかな焦りに
包まれるよるは
汗が
うっすら
おもいでになる
いたみはそうして
離れて
つないで
迷いはけして
終わらない、でも、
泣かなくて
いい
いらない果実は
どこにも無い
から
詩人:千波 一也 | [投票][編集] |
透明の底にあるものを
探せてはいない、ということを
探しているのだとおもう
それゆえわたしたちは
疑問の形をよそおいながらも
空に吹かれる日々を
なぞるのだろう
丁寧に、
さまよいながら
怯えるのだろう
けがれることを知らない途中で
いつしか覚えた閉じ方は
瞳をすぐに溢れてしまう
いつも、
そうして
たやすく呼んでしまうそれらを
拾い尽くせずに
奪われたままかも知れない
わたしたちは、
永遠に
乾いてゆくから
乾いてゆけるから
ときどき意味を逆さまにして
もとめられ
待ちわびるような
やさしさかも知れない、
永遠は
染みこむほどに
おそれ、わすれて、
消せないような
透明の底にはないものに
届いてしまう、その距離を
ちいさなひかりが過ぎてゆく
この声は
どこにも届いていかないだろう
ときどきそれを解放として
おだやかにおろそかに
しあわせを沈み、
すべての祈りは
底に在る
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もう、
忘れてしまえないだろうわたしを置いて
片耳うさぎよ
にげなさい
どうして、
こんなにも寂しいというのに
深みにはまることを知ってきたのに
どうしても、
ひとを離れては
眠りにつけない
言葉、
ひとのもたらす言葉について
もがいて終わるだけではなくて
知りたい、
知りたいと願えることの
まだみぬ闇を
胸、
胸の奥底にある浅瀬がきらり、
きらりと刺さる嘆きであっても
わたし、
そこでまだまだ
呼ばれていたい
ある、
名前はかならず残ってあるから
言葉、
ほんとうのことから
消えないつもりで
さまようことの
言葉、
でありたい
だけれど上手に
半分だけでも許されはしないだろうか、と
ありえぬ月夜から
ほほえみを
こぼす、
託す
片耳うさぎよ
逃げなさい
わたしのほろぼす
わたし、から
詩人:千波 一也 | [投票][編集] |
くり返す波に
届かずじまいの手を思うとき
ようやくかぜを
聞いた気がした
この世にひとつの
具象のように
二本のあしで
すれ違えるものを
まちがえながら
ここにいる
ほら、
陸地にはもう
いさりびだけが
くすぶって
おそらくずっと
知らない昔に
触れていた
手探りで
しずかにふさいだ耳のため
拾うことばに
拾われて、
みる
あおくあおく
どこまでも
何よりも
ただ、いまは、
まだ、
かなしみ沿岸で
さかなは必ず真新しい
毎夜、
あるいはその序章としての
語りのなかで
充ち満ちそうに
無音が跳ねる
連続せずに
こころを
踏んで
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ふたつ、
別々にあるよろこびは
わずかなあいだだけ
並んでみせます
滑らかに
ひとつのループを分け合うことは
しだいに加速を招きます
より一層よろこびたくて
より一層おおきなものを
みせたくて
ふたつ、
別々にあるよろこびは
もともとの場所を知らないのです
そのかなしみが
よろこびをなし
ほどなくそれは繰り返されて
こごえるのです
おそれるべきが
みえなくて
ゼロはたやすい意味のまま
ゼロをはなれていきました
ふたつ、
別々にあるよろこびは
なくなるものだと思います
始めからおわりまで
順序立てることを
忘れたままで
アイス・オン・アイス
もともと
ささいなことでした
消えてしまう寂しさをただ
あきらめきれない
やさしさのなか
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かじかむ理由は
雪ではないね
それは
雪のなかでこそ
探せるものだけれど
雪そのものは
寝ているだけだね
てぶくろは
つかのまの嘘だと思う
夢だとか
情けだとか
その素顔のことは
きっとだれにも
責められない
信じることで
ほつれてゆくから
疑うべきだろう
その哀しみを
毛糸も綿も
やさしい幻だと思う
すべての冬は
とまらないけれど
確実に過ぎてゆくけれど
吐く息は
てのひらを染みてゆく
守るかぎりは
何度でも
真っ白く
凍てつくことは
しずかな躍動
北風は
言わないね
さよならなどは言わないね
空から降りるすべの下
或いはときどきその上で
頷くことを
なくさずに
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肩を
すべり落ちてゆくものを
不可能なくらいに
拾い上げるから
忘れておけない
まなざしの青
つないで
必死につないで
自分の口から出た言葉が
たとえ終わりを決めるものでも
別れることを数えていても
はじまってゆく
すべての代わりとなるように
燃やされていた
傷つき慣れていた
ひそやかに
明らかに
向かってゆけなくて
空を見上げるあいだ
目覚めた背中が
ようやく語る
ひと言では難しい
それぞれの思いやりで
ため息たちが
白く旅立つ
つかのまの恥じらいの
危うさを名乗らずに
受けとめていた
義務のはかなさ
せめて
確かめることくらいは
離さずにおこうと思う
適切に追いかけて
知ろうと思う
あどけない日々を
時代は細く横たわるだろう
だからこそ
失わないで再び会える
自分が決めた場所として
必ず、睦月に
ひとりずつ
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ことばは
なまものだからね
時間とともに
かわっていくからね
古くなる、
そのたどり方が
気にかかるね
誰かにとって
なにかにとって
いい意味でのめぐりとなれば
肥やし、なんて
呼ばれるだろうし
放っておいた
つもり、がながく続いているなら
そろそろどうにか
しなくちゃならない
古いものを
きちんと古く、
わたしたちもまた
そうして儀礼を
生きているなら
正すべきだね
新鮮なものが欲しいです、と
口に出しても
出さなくても
いつか気がつく
古くなる
ことばは
なまものだからね
温度のなかで
かわっていくからね
生かしていくのは
生かされるもの、
だね
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わたしのなかでは
きえない、ゆき
きこえないことば、には
あふれるくらいに
ふれているのに
ふるえています
たしかさを
ましてゆく、ような
かさのなか
みずからふかく
かさのなか
おもかげは
ひとつの、きのう
くわしくなりえない、その
きのうはふえて
おもくなります
うらうらの
いし
ただようなみまで
おいかけ
て
うらない、
そうです
どこにもなく
どこででもなく
ついで、
あらゆるみず、を
むこうにおいて
わからない、ほど
うれて、うれゆく
からがらのひび
すみますか
やみますか
ふるい、わたしを
ひとみに
かえて