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千波 一也の部屋


[1019] そよかぜ
詩人:千波 一也 [投票][編集]


いつだって

洗いたてのけものを

演じてる


そうでなければ

狂ってしまうことが

わかっているから

何億年も前から

わかっている

から


これまでに

かぜの怯えは

聞いたことがない

それだから何となく

そよかぜのうそが

小気味よい


洗いたての毛並みには

ほどよいかぜが

必要なので

ちょうど

うそと

うそとが

折り合いよくて


岸辺がいつも

すがすがしいのは

刃物のような

恐怖の

ひとつ


それゆえ時は

咆哮をする


けものの演技を

足元から

さらうようにして

さらう気もないくせに

懐かしそうな

顔をする




2010/05/10 (Mon)

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