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千波 一也の部屋


[1158] 無力の位置
詩人:千波 一也 [投票][編集]

転んで

ひざを擦りむいて

泣きじゃくる頭には

おそるおそる

手をそえて

「大丈夫か」と

声をかけるより

すべがない


なにか

途方もなく

大きなものに

こころを射抜かれたような

泣きじゃくりもせず

たたずむ者には

かける言葉を

持ち得ない


痛みよ、去れと

ねがうのも

温みよ、

宿れと

ねがうのも

嘘ではないが

その

嘘ではない、ということが

なにを保障するかは

わからない

たぶん

なんにも

保障しないだろう


わたしは

そうして地上にあって

空をながめたり

海をのぞんだり

地上で

唯一の

宝ものを

探そうとしている


誰かのための

やさしさに

なれないものだろうか、と

今日も

無力に

立たされている





2012/08/30 (Thu)

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