砂の城は潮風にだけ開かれている砂の城は形あるものを招きはしないそのことに気づいたものたちはゆっくり砂へと戻りはじめるそしてそれらの隙間へおよぶ視線たちも同様にゆっくり砂へと戻りはじめる砂の城は空洞だらけの構造だからなにものも閉じ込めたりはしないそれなのに出口を求めるものたちがいつの間にか、ある生まれつきの砂などないたったひとつのその真実が孤独の層を悲哀の層を築きあげてゆく崩れることを繰り返しながら築きあげてゆく
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