詩人:千波 一也 | [投票][編集] |
悪気などないのだから
だから尚更
優しいあなたは嘘つきになる
誰をも騙せなくて
自分を騙すことではじめて嘘つきになる
それがたとえ取り繕いの仮面であっても
優しいあなたは
そういうふうに嘘つきになる
けれどもやはり安手の仮面ゆえ
途ゆく人は
あなたの背後を確かめる
優しいあなたは自分しか騙せないものだから
途ゆく人に嘘を手渡す
優しく手渡す
優しきあなたよ
振り返る途に
いくつの涙が見えるだろうか
振り返る途に
いくつの掌が見えるだろうか
判決、
その優しき光の源を
絶やさぬように抱くこと
判決、
すべての温かさの懐に
優しき寝息を立てること