詩人:千波 一也 | [投票][編集] |
山の背中にあるものは
いたずらからすの
帰る家
山の背中にあるものは
遊びつかれたきつねの寝ぐら
山の背中にないものは
枯れ葉やつぼみを
こばむもの
折れた枝にも
苔むす岩にも
あるじの無きが
見つからない
山の背中にあるものは
むかしの足跡
まだ見ぬ
足跡
さくらも 蝶も
もみじも 雪も
つちの上から つちの底へと
風のそとから 風のなかへと
何度も何度も
くり返す
それらがきっと
ひとの胸
わがままに鳴る
ひとの胸
山の背中にあるものは
すべてを知って
知らぬふりする
山のかお
踏まれたような
踏ませたような
だれにも描けて
だれにも描けない
山のかお