詩人:大示 | [投票][編集] |
緩やかに舞う風
あの日と同じ匂いがする
穏やかな朝
微かな記憶の中
遠ざかる大切な人を
見送っていたはず
微笑み、手を振ってくれた
あの人は未だ帰ってこない
今、僕は旅立つよ
あなたを捜しに
世界の果てで、きっと会える
そんな予感が身体中を駆け巡る
予感が期待になったとき
僕は、あなたより
強くなっている
そう信じて、僕は旅を続けるよ
詩人:大示 | [投票][編集] |
夢を紡いでいるような
不定形の世界の中で
現実を告げるのは
おかしな時間に鳴り響くハト時計
小窓からこちらを
チラチラうかがう白いハトを
出てきた瞬間に捕まえる
豆鉄砲を喰らったようなその顔に
現を見た気がして少し笑えたが
私が思い切り引っ張ってしまった
白いハトは二度と小窓には入れず
この世界から逃げられないのだ
あまりにも鳴くので
気が向いたら直してやろう
そう思ったのも、ほんの気紛れだ
詩人:大示 | [投票][編集] |
空っぽの僕
いつもは何も考えず
必要な時に薄い感情を出してみる
そんなことをしていると
僕は随分と性能の悪いロボットなのでは・・・なんて
埒のあかないことを考える
あぁ、でも僕は、まだ
機械などには敗けていない
どうしたわけか
涙だけは僕の許し無しに
流れるのだから
『まだ、空っぽじゃあ、無い』
誰かに、そう認められた気がして
僕は、静かな感情のまま
泣いたのだった
詩人:大示 | [投票][編集] |
気がつくと、僕はドアの前にいた
手持ちの粗末な造りの鍵では
開かないようだった
僕は途方にくれドアを蹴飛ばした
『やかましい』
向こうから開けてくれたのは
お節介な友人と家族達だった
僕の鍵は、僕と同じで
まだまだ未熟でひねくれていて
ぽっきり折れそうだけど
生きているなら
時間があるなら、いつか最高の
鍵が出来上がるだろう
だから、願わずにはいられない
ささやかな平穏が続きますように
詩人:大示 | [投票][編集] |
この世の終末が来る
まるで『夜』という暗闇に
頭を支配された様な突拍子の無い
この考えは
私ではなく長年、傷を負い続けた思考が産み出したものだ
灰色の細胞達が、私を『恐怖』に
引きずり込もうとしている
繰り返し、繰り返し、その都度
最高の恐怖へと導こうとする
その都度、私は抗う
暗い感情が存在している
認めるが、支配はされない
正と負を持った、不完全な生き物
これこそが私だ、と
詩人:大示 | [投票][編集] |
一枚の写真の中
笑っている僕がいる
この時の笑顔が偽物だったのか
本物だったのか
そんなことは
今となっては、わからないけれど
『本物だったら、いいな』と
僕自身が
そう呟けるようになったから
ほんの少しだけ
マシになった気がしたよ
その時の一瞬の感覚の記憶なんて
あやふやで
自分の都合のいいように黒く塗り替えてしまっているなら
もう一度、周りをよく見て
白紙に戻すことだってできる
それは僕にしかできない
大切な仕事だ
詩人:大示 | [投票][編集] |
動かない心に、忍び込む暗闇
苦痛すら理解することかなわず
私は決められた運命を歩く
誘われるまま、道なき道を進む度
周りの声が、景色が幻に
傍にいた人達さえ見知らぬ人に
なっていく
このまま、私は壊れてゆくの
普通なら、直視できないほどの
惨劇を、何処か遠くで眺めながら
今までの全てが悪い夢ならば
どうか、お願い
私の目を、さまさせて
今までの全てが本当ならば
正しい運命よ
どうか、私を裁いてください
詩人:大示 | [投票][編集] |
価値観も、何もかもバラバラの
この空間で
自分は正しいと言えるだろうか
人との関わりを断ち切ったままで
自分だけが苦しいと
言えるだろうか
比較することが難しく
褒められたものじゃないけれど
今、僕は、どの場所にいるのか
しっかり知っておきたいんだ
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僕の中にある苦しみは
あなたが何を言おうとも
僕にしか、わからないもの
あなたの悲しみは
僕が何を言おうとも
あなたにしか、わからないもの
『いつ消えるのだろう』
『いつ乗り越えられるのだろう』
『いつ?』
『いつか』
『いつか』なんて日は本当に
あるのか、わからない
それでも一緒に行こう
そう言って振り向いたその顔には涙のあとがあるけれど
あなたは笑っていた
完璧に生きられる人なんていない
格好悪くても
歩けるうちは、歩いてみるよ
最後に出迎えてくれる人の
優しい眼差しを思い浮かべながら
詩人:大示 | [投票][編集] |
あの日、笑ったあの人の
きれいな横顔、心の中に
あの時、泣いたあの人の
静かな震動、手のひらに
いつも怒っているような
厳しい顔は、瞳の中に
たとえ、あなたがいなくなっても
私は、たぶん大丈夫
あなたも、大丈夫かな
最後の時まで、あなたのままで
いてくれますように
勝手な願いは秒針の音に紛れて
姿見せない明日へ