詩人:喋る狼 | [投票][得票][編集] |
讃えて違うと言い出せば
海を知らない蛙と嗤われ
皮肉に同じと言い出せば
盲目なりやと同情される
我が生涯に悔い等ないと
死にゆく者の気がしれぬ
象る物は命宿らぬ赤褐色
己が血より出来ている罪
存在否定も甚だしいとは
疑う者なく明日が来るは
世界の闢いた時より同じ
ことわりの下蠕いている
神の家畜とひれ伏す存在
足掻き藻掻けど動かない
摂理を前に無力だという
戦士は何処へも臨めない
右手の剣と左手の槍とを
神に突き出せど届かない
隣の者たちは口を揃えて
何者と戦っているのかと
或者は嗤いまた同情する
解けぬ氷は青さがゆえか
春が来るなら解けるのか
壮大にして恐るべき嫌悪
塗れしその血は善人の咎
醜悪にしてまた凄惨なり
恐らく何も変わる筈ない
整然と並ぶそれらを見て
己が粗悪なるは一目瞭然
讃えて違う何かを探して
唯一人だけ奮戦するのは
名前を呼んで欲しいから
唯ただ叫んで欲しいから