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理恵の部屋


[111] 記憶の中
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目の前はらりと木の葉が落ちた
この感覚はなんだろな
胸にぽつんと生まれた
しこりのような違和を感じる

鞄から小説を取り出して
読みながら歩く並木道
笑いながら真っ赤な色をした
ランドセルに追い抜かれてく

この感覚はなんだろな

僕はあの子を知っている
初めて見たあの子を知っている
あの無邪気な笑顔を知っている

また小説に目を落とし
並木道を進んでく
視界の端が眩しくて
顔を上げたらきらめく川面

ふわりと黒髪が揺れた
この感覚はなんだろな
今揺れたのは誰の黒髪

パタリと足元で音がした
手の中に小説はない

閉じたページを開こうと
伸ばした手に重なった
白くて細い真珠の手

この感覚はなんだろな

拾い上げて前を見た
目に映らない季節がよぎる

この感覚はなんだろな

とても大切な何かを
忘れてる気がする





H30.2.23.Fri

2018/02/23 (Fri)

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