詩人:理恵 | [投票][編集] |
数年前、彼からその絵画を買い取った
とても魅力的な一枚だ
私が踵を返すとき
待ってくれと彼は言う
これなんかもどうだい?
なんて、テーブルに広げて
潮のように渦巻いて
星まで自己主張の強い夜の空
なんだその絵は? 勘弁だ!
私は静かな夜がいい!
そう言うと、彼はじゃあこれは? と
茶色い絵を持ってきた
おいおい、きみは正気かい?
こんな花瓶に収まる花が
太陽の下伸びゆくひまわりなんて
悪いが今日はこれで終わりだと
歩き出した後ろから
いやぁ、すまないと声がした
しかしそいつは凄い画家だから
また見てやってくれなんて笑いつつ
彼はそれをしまいこむ
全く! その青が渦巻く夜に
何を見てるか知らないが
その画家の絵が一枚売れたと聞いたのは
それからまもなくのことだった
いま、二つ並んだ石を見て
なるほど、私にはわからないわけだ
そこにはただただ、風が吹く
彼は今日も信じているのか
その石に刻まれた、同じ名のもとに
R1.11.25