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フィリップの部屋  〜 投稿順表示 〜


[313] クローゼット少年
詩人:フィリップ [投票][編集]

クローゼットに籠もって
瞑想しようとしたら
そのまま眠りついた
世界の明るさ
人間であること
存在するという大義
何もかも嫌になって
また心を生き返している

真っ暗な空間は人を駄目にするという話を聞いた
そのほとりで人間は暗闇で眠り起き
昨日から今日
今日から明日へ
命を繋いでいる
全ての始まりは闇
真っ暗な世界のはずの真夜中、午前0時から
明日という光は始まっているのだ

人間は光の子でありながら
また、闇の子
生きていく上で隠し通すことは容易ではないけれど
さらけ出すということは
あらゆるものより美しい

クリィムソオダの泡でもって
人生を仕切り直ししよう
時刻は午前0時前
明けない夜明けの向こうに
また今日という名の明日が
その産声をあげ始めた

2008/06/19 (Thu)

[314] バースデー
詩人:フィリップ [投票][編集]

唐突に電話が鳴っている
受話器の向こうの世界を
僕はまだ知らない

好きだった女優が
先ほど女優でなくなった
時刻は日付変更線を越えている
生き残ってしまった罪悪感も
今日を生き延びている安堵感も
今となっては
紙切れのように薄っぺらい
人が人でなくなる時は
いつも辺りは真っ暗闇だ

happy,birthday
今日は確か
僕の誕生日
生と死の狭間の日
生き直すことも出来ずに
僕は今
死に向かって歩いている
途中下車も休憩もない
その空間で
ちょっとだけ泣きそうになる

一人部屋に女性が来た
朝を告げる目覚まし時計が半日遅れて鳴っている
ぎゅっ、とする
彼女が笑っている
そしたら
二人で笑い合っている

2008/06/24 (Tue)

[315] Tokyo poemstory
詩人:フィリップ [投票][編集]

早朝のお台場付近を歩いてみた
灰がかかった空の中に朝らしい色を探る
今日のこんな朝にもどこかで誰かが
詩を書いている


合同詩集を作りたいという友人
つまり詩人のジョセフと
カメラマンのドメニコの為に
詩の素を探す
新人ジョセフは恋愛詩を書きたいというので
とりあえず恋をし
ドメニコは高層ビル群が撮りたいとかで
新宿に向かった
誰もいないTokyoは美しい
喧騒も排気音もどよめきもない
この広い空間に
僕たちは三人きりだ


Tokyo poemstory
僕たちは言葉を媒介にして空を飛ぶ
遠いどこかで何たらかんたら賛美歌が響くように
不具合な言葉は
今まさに命を紡いでいるのだ

明け方の空間が終わりを告げる
灰は今まさに青色
誰もいなくなった後で
最新詩集のタイトルだけを記憶している

2008/06/26 (Thu)

[316] ホームの上で詩人は
詩人:フィリップ [投票][編集]

ホームの上で詩人は座っている
座りこんで考えている
波の音
空の色
夕凪の気高さ
重力の惨さ
今日という日の時間を感じるように

今月はケータイを使いすぎて
料金が二万円を越えていた
クシャクシャにした督促状を開いて
またクシャクシャに畳む
詩を書くということは
かなり精神を犠牲にするので
ときたま
友達に片っ端から電話したくなる
今月が丁度、そんな感じだった

電車のライトが光る
遮断機が降りていく
流された筈の時間が巻き戻っていく瞬間に
僕はまた
新しい僕へなっていくのだ

2008/07/03 (Thu)

[317] 告白
詩人:フィリップ [投票][編集]

空が焼ける前に
この声が枯れるまで
「君が好きだ」と叫ぶ

2008/07/09 (Wed)

[319] SEIKEN
詩人:フィリップ [投票][編集]

まるでドラム打ちのような感覚の日々と
不安と希望を乗せたテーブル
制服を着て
朝刊を放り投げて
今日は何分風をきろうかと考える

3月2日
その花片は二階辺りの窓から
ヒラリと降りてきた
アルペジオの調でもって
愛を謳おうか
校歌を歌おうか
迷っている
僕と君の時間だけが
ゆっくりと流れていく


三年、という月日はいつも
人間を一人おいてけぼりにする
USBに保存した記憶は
一分一秒単位で刻み込まれたものばかり
今日という日が
三年、という月日よりも
どれほど長く感じられるだろう
永遠という言葉に酔いしれた夜は
今日以外には有り得はしない

小田の流れの水清く
桜の花の咲くところ
校歌の一部を口ずさむ
三年間存在した世界は消えて
今はただ
歌詞の一文だけが
音像となって
風に流れている

2008/07/23 (Wed)

[320] ビエンナーレ
詩人:フィリップ [投票][編集]

神奈川のトリエンナーレが気になって
カッセルのドクメンタに目を向けるのを止めた
キュビズムでもフラットでもない
未知の世界は僕の目前に迫っている
1ヶ月という待機期間に
時は今、満ち溢れている


ミュンスターの野外彫刻プロジェクトのような
荒々しい何かに憧れていたのに
気が付けば、僕の目はDOBに向いている
月日と共に
人間は変わっていく
それはとても
残念な事だと思う


とある芸術家に遭遇した
彼女は、「その作品を見て、自分が思った事を大切にしなさい」と言った
ドクメンタもトリエンナーレも
枠は同じだ
現代美術というジャンルの中にまとまったものなのに
僕は差別している
僕の眼は、どうしてこんなに濁っていたのだろう


神奈川のトリエンナーレが気になって
カッセルのドクメンタも気になってみた
ヴェネツィアビエンナーレというものも昨日知った
固定化した概念を捨てて
人間はもっと羽ばたく事が出来る
僕たちの未来は
そこにあるんだ、多分

2008/07/30 (Wed)

[322] 僕たちには、夜がある
詩人:フィリップ [投票][編集]

砂が降って
闇の帳を越え
皮膚だけが呼吸を忘れていく
流れ星
鍵をした部屋に
ヒーローの絵本
夜は
いつだって灯りを求めてくる


夏の果て
フロリダの夕焼け
受話器越しに
声で愛そう
夜が迫ってくる
太陽が消えていく
多分、世界なんて
鉄柵なんかで囲まれていて
果てなく有限だ
つまみ恋
キーボードに託された想いが
風に揺れている


眠る前に
アドレナリンを噛み砕く
今日の僕は死んだ
湧き上がる何かを抑えるだけで
また新しい僕が生まれる
星の輝きも
月灯りもいらない
僕たちには、夜がある
はりめぐらせた送電線をくぐって
浜辺を走ったりしながら
ひたむきに時間を旅している
輪郭だけを残した
僕の夜が明けていく

世界がつづくとしたら
明日は来る
部屋のブラインドの角度で切り込んでくる今日を
誰かが朝と呼ぶ
また生きなければならない時間を
僕はただ
寝て過ごしている

2008/08/15 (Fri)

[323] SunSet Bruce
詩人:フィリップ [投票][編集]

つい最近
隣の世界から越してきた友人と
信号待ちをする

小さく流れ出る
異国の情緒が
空を紅く燃やす
溶け合った紫とオレンジからなるブルースだけが、君のすべて
交差点の角度で消えていく世界の小ささに
僕は驚愕した


世界の最期は
案外早くに来るものだと思った
異国の匂いが幾らか好きになった途端
あっけなく消えたのには
怒りも悲しみもなく
そのくせ
右手に見える大病院では
世界は再生を始めている
屍の山を踏み分けてくるものを
明日と呼ぶのだ
どこかで誰かが
未来だと言うのだ


「山本君、なんか夕焼けの匂いがしますよ」と
倉敷の街で
倉敷の友達が言った

隣の世界に愛を馳せたくて
信号待ちを諦めて
老松の裏路地を歩く
ホテル街を歩くうちに僕は
あの日のブルースを思い出した

SunSet Bruce
今日と同じ
うすくれないの空
異国のメロディを捨て去って
僕がアレンジした隣の国のブルースは
確かそんなタイトルだったと思う

2008/08/20 (Wed)

[324] 送信しました
詩人:フィリップ [投票][編集]

メールを打ち終わった時に
ケータイの液晶画面にて
「送信しました」と出るのを
僕は必ず確認する

キーボードを一回押すごとに
僕の想いは蓄積されていく
完成した電子レターを構成する言葉の一文字ひともじが
電波に乗って
「好きです」と伝えてくれるので
一人で部屋にいるにも関わらず
毎回僕は
汗だくになっている

今宵は特別に
心臓がばくばくして
口に水をふくむと
気が楽になる

あんなにメールしているのに
明日会う君の
メールでの返事が思い出せない

2008/08/20 (Wed)
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