ホーム > 詩人の部屋 > フィリップの部屋 > 投稿順表示

フィリップの部屋  〜 投稿順表示 〜


[337] 皐月
詩人:フィリップ [投票][編集]

皐月の中頃にて
高速バスの一番前の右側座席に座って
君の街へと行く

ぶっきらぼうに過ぎていく景色の中で
麗らかな陽射しが見据えている方向にある目的地は
もはやこの世のものではない
遠い遠いアンダーグラウンド


ともすれば消えてしまいそうな心の内で
必死に想いのハケを抱くと
ひょっとしたら
遠い遠い異国の情緒に似たものを
この世の果ての世界で
見つけられそうな気がしたりして

2009/04/25 (Sat)

[338] エクセレン
詩人:フィリップ [投票][編集]

煙草に、上手く火が着かない年だと思った
カチカチとライターを遊ばせて
焦げすぎたくらいでやっと煙が出る
心はきっと吸いたいのに
からだはきっと吸いたくないのだ


エクセレン
君は言ったよね
私たちはきっと痛んでいる
悲鳴をあげている
生まれた時から人は叩かれ打ちのめされて病んでいる
だから死ぬべきか
生きるべきか
いつも悩んでいる
それで死んだ後になって
やっぱり生きたくなって
叶わなくて
土になっていくんだよって

なら
取り残された僕らは一体どこへ行けばいいのか
岡山の詩人も
鎌倉の学生も
東京のアイドル声優も
仙台のトランペッターも
無責任な生の答えを一人孤独に探している


僕らはこれから
今日一日をかけて
何を失っていくのだろう
つまらない日常を
かなぐり捨てる事も出来なくて
生きていく為に
嫌々ありのままを受け入れるフリをして
死にたいなんて
時々思ったりして
そのくせ
こうやって君の事を思い出したりして

そうやって
ちっぽけだけど一度しかない人生を
苦しみながら
生きてく
生きてく

2009/04/26 (Sun)

[339] アイドリップ
詩人:フィリップ [投票][編集]

新大久保駅の沿線は何だか
同じビルばかりが並んでいるようだった

降りもしない雨を待って傘を広げている未亡人や
散歩に誘われた小道でキスをするカップルも
そこらじゅうに転がっている小石と同じくらいの密度を持っていた


電車が速度を落とす一瞬に垣間見る
ねじくれた軌跡
遠い異国の詩人は運命論を咏い
横で寝ているサラリーマンは起きぬけを飾っている
駆け抜けていく景色の中で
無力な僕はただ
流されていくだけだ

アイドリップ
アテンダンス
ア ゴールデンウィークタイムズ

どうでもいいことばかり口ずさんで
どうでもいいことばかり夢見ている

2009/05/16 (Sat)

[340] ブレス
詩人:フィリップ [投票][編集]

フラれた瞬間
ぼくの世界が転がって崩れた
昨夜
それで
あなたをまた
好きになった


あなたの吐息を下さい
エレベーターの中で呟いた
そしたら
足下ががくんと揺れて
気持ちがまた確かになった


幸せを願っています
幸せになって下さい
そうして僕を
幸せにして下さい
横切っていく、気持ちのループ
無意識の彼方で
記憶の便りで以って
見つめ続けていたい

2009/05/28 (Thu)

[341] 溺れる世界
詩人:フィリップ [投票][編集]

親指の動きが
次第にあなたを描いてきたので
そろそろ
また逢いたくなってきている

完成した器を求めて
さ迷ったあげくに
待っていたのが
幸せというものなのかどうか、曖昧
どうかして、寄り道のように
好きになった
つまらない恋だというのに


おっさんに睨まれた
というより
僕はその時、世界から睨まれた気がしていた
三十にもなるというのに
そう、何かが言った
無数の瞳が、僕を見ている
手首に残った傷が
初めて、ズキンと痛んだ

2009/06/21 (Sun)

[342] モーニング・グローリー
詩人:フィリップ [投票][編集]

知らない言葉を知る度に、大人になったフリをした
そうして僕は
本当に大人になっていった
アネモネの花弁に付いた朝の一片だけが、まごうこと無き現実だと知って

そういえば、と過去へ
片足のさきっぽだけを浸してみる
思ったより様々な重みの中で生きていたようで驚いた
二十一年という年月は案外重い
知らない誰かに半人前扱いされたとして
それは何の脈絡もない事を教えてくれたのが
明日って存在だった

生きているうちに
僕らはどれだけの朝を超えるのだろう
新橋駅の改札で
知らない国の大使館で
まだ見ぬ君とベッドの中で
僕らは様々な希望を越えてゆく
今日も明日も明後日も
夜のような日常が僕らに付けた痣を
夜明けが、打ち払っている

2009/10/06 (Tue)

[343] アルベール賛歌
詩人:フィリップ [投票][編集]

自動車の排気ガスが噴いた
アコースティックギターを弾くしなる指がピタリと止んだ
若葉がひっそりと年老いていくように
かみさますら
知る事のない間に


アルベール
お前はたった一回だけ夢を見た
その間に僕は
何万回も夢を見ている
轍と刺し違えて
僕が死ねばよかった
そうしたら
もっと豊かな夢を見られただろうに


友よ
河を超えた先では
元気にしているか

星は出ているか
天気は淀んではいないか

この詩を謳っている
東海岸の夜の空は
こんなにも瞬いているというのに

2009/10/25 (Sun)

[344] 朝に
詩人:フィリップ [投票][編集]

肌寒さを感じる事はいい
まだ朝に成りきれていない夜の残り香が
ツンと鼻をついている
始発とおぼしきロウカル・レッシャの汽笛さえも
ツンと鼓膜を震わせて

まだ薄暗いのに
国道はよく車が走ると思った
駅前のセブンイレブンが
早朝部活に挑む高校生が
朝の輝きを
他の何者よりも早くに放っている
僕たちが眠っている間に
世界は起きていた
それから
バトンタッチで
人の息吹が
世界を眠りにつかせるのだ


肌寒さを感じる事はいい
見知らぬ子供の起き抜けた声さえも
ツンと心を震わせて

2011/09/01 (Thu)

[345] 人間的な
詩人:フィリップ [投票][編集]

すっかり生きていた
夜の帳をくぐり抜けながら
僕らは地べたに寝そべって
まだ見ぬ明日を待ちわびている

ところで
百年前に僕は
この場所で何をしていたのだろう
百年後の僕は
この場所で何をしているのだろう
生まれ変わりを経て
また人間になれたならいい
ここはきっと
思いがけない場所になっているに違いない

いつの日だったか
殺した鹿を食べた気がする
熊野川の透き通る冷たさの水を口に含んで
僕はあの時
確かに人間だったのだろうか

我々は
何処から来て
何処へ行くのか
殺したものの肉を喰らいながら
命を分かち合いながら
そんな事ばかり考えている
今日この頃

2009/11/03 (Tue)

[346] アドリブノート
詩人:フィリップ [投票][編集]

グラスに声をいっぱい汲んで
溢れ出したら
それを互いに交換して飲み干してみたい
君のグラスに隠された
幾つもの心の振動を
味わう事が出来るから

甘い事を言おうか
辛口に行こうか
迷いながら
それでも選び取っている
書き留めた台詞のどれもが
無駄な言葉なのかも知れない
詩とは
そういうものだが
そういうものが
詩なのだ

言葉でリズム
オシャレは声で伝えよう
鉛筆の煤で真っ黒になるまで
綴った言葉と文字と記号で
今日も誰かに
恋をするのだ

2009/11/03 (Tue)
117件中 (91-100) [ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 >> ... 12
- 詩人の部屋 -