詩人:フィリップ | [投票][編集] |
ピアスを揺らす風が吹いて
ふいに、もう二つ開けたくなった
君と同じ数だけ
痛みを知ってみたかった
痛みとは愛の権化なり
道に迷った猫を追うそうしたら
途中で君と別れて
結局、君と出会う
出会い直し
二人で一人だということを知っている
それが人間
人間とは愛の権化なり
離れては
生きていけない奴等がいる
何故だろう
答えを知っている奴がいる
「血液が君を呼んでいる」
誰だろう
神様だろうか
くっつきあって影になる
影となってくっつきあう
僕らは
愛の権化なり
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メールが帰って来ないときは
だいたい、あいつに抱かれている
触れ合うと怪我をするのに
それでも触れてしまう
無意味だとわかってたって、温度を確かめないと
僕の温度がゼロになるんだ
独りでもいい君は一人じゃない
独りじゃいけない僕は二人じゃなかった
欠けていたって
欠けていなくたって
輝くか鈍るかなんてのは
たいして変わらない
おんなじなんだ
おんなじ月だ
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通りの向こう側で
知らない誰かが手を振っている
何処へ行くのだろう
無邪気な風たちよ
君たちは
一体何処へと
握った手のひらから温もりが伝わって
僕の内側へと
何かが還る
さっき買った缶コーヒーと
おんなじ温度で
意味などない
意味などないから
コールドじゃない
ただ、去ってしまった君の温もりとか
在りし日の季節の温度とか
思い出したかっただけ
思い出したかっただけ
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ヴィジョンが浮かぶ
そのときには
多分
違う世界にいる
僕ではない僕が
僕に相違無い僕と
宇宙語みたいな
会話をしている
言葉を選んで
組み換える
アナグラムと似ていて
アナグラムとは違う
僕の言葉は
いつもそうだ
消えない会話をしよう
交わした言葉と文字と記号は
多分、いつもお洒落
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起き抜けの朝に
君を待つ
時計の針は廻らない
夕方、君に掛ける言葉を生み出す為に
声が溢れる
朝陽にたゆとう
身体と心が
君を待っている
一週間に一度だけ
安直なメールのやり取りをして
来週を待つ
新しい何かが生まれる朝は
いつも僕を待っている
窓際
昨日交わした言葉たちを眺めて
一人じゃないと
心が跳ねる
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戦場ではない
戦争が起きているのではない
銃弾ではなく
言葉が飛び交う
街には
悪意ばかりが溢れている
戦争は終わらない
区切りがついて
また旗を振る
生きる為に誰かが傷を生み
誰かが癒しの悦に浸り
喜びなり
哀しみなり
何かしらの涙を流す人間の宿命
すれ違う度
こすれあう
治癒することの無い痛みが
蔓延していく
ハッピー
幸福を求める度
魂だけが剥がれ落ちていくのを
誰も知らない
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私とは何だ
私は誰だ
月が満ちる頃になると、決まってその苦痛が始まる
器械でも人間でもない
善でも悪でもない
神にすら見放され
また神をも砕く力を手にし
私自身の存在の証明もままならず
私は一体何処へ行こうとしているのだろう
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文字は黙っている
だが
言葉は決して黙ってなどいない
悪口雑言を並べ立て
賛美の限りを尽くし
善行も悪行も
いっさいがっさいの境界線など
この世のどこを捜しても存在しえないことを知っている
人間の不完全さを説くのは
あるいはそれに気付いている者は
小説家や詩人
そして一握りの賢者たちだけだ
文字は黙っている
だが
言葉は決して黙ってなどいない
栄え在る意義を持っている
人を欺き
またそれを見破り
何万年もの昔から
人間の持つ最大の武器として
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街角には
亡者が蠢いている
痩せこけた少女
ベビーファームに預けられた赤子
彼らにはもはや
名前もなければ明日もない
かなしみなど
単なる過去の断片でしかない
その国の罪は
その国の民に等しく散りばめられ
その国の過去の姿は
この国の未来の姿
誰にも止められない
ただの歯車の
なんと恐ろしく惨たらしいことか
かなしみなんかへっちゃらな
かなしみをしらぬものたちは
かなしみなんかへっちゃらだ
ただ繰り返す
あやまちと
罪と
ただへっちゃらなかなしみを