詩人:フィリップ | [投票][編集] |
神奈川のトリエンナーレが気になって
カッセルのドクメンタに目を向けるのを止めた
キュビズムでもフラットでもない
未知の世界は僕の目前に迫っている
1ヶ月という待機期間に
時は今、満ち溢れている
ミュンスターの野外彫刻プロジェクトのような
荒々しい何かに憧れていたのに
気が付けば、僕の目はDOBに向いている
月日と共に
人間は変わっていく
それはとても
残念な事だと思う
とある芸術家に遭遇した
彼女は、「その作品を見て、自分が思った事を大切にしなさい」と言った
ドクメンタもトリエンナーレも
枠は同じだ
現代美術というジャンルの中にまとまったものなのに
僕は差別している
僕の眼は、どうしてこんなに濁っていたのだろう
神奈川のトリエンナーレが気になって
カッセルのドクメンタも気になってみた
ヴェネツィアビエンナーレというものも昨日知った
固定化した概念を捨てて
人間はもっと羽ばたく事が出来る
僕たちの未来は
そこにあるんだ、多分
詩人:フィリップ | [投票][編集] |
まるでドラム打ちのような感覚の日々と
不安と希望を乗せたテーブル
制服を着て
朝刊を放り投げて
今日は何分風をきろうかと考える
3月2日
その花片は二階辺りの窓から
ヒラリと降りてきた
アルペジオの調でもって
愛を謳おうか
校歌を歌おうか
迷っている
僕と君の時間だけが
ゆっくりと流れていく
三年、という月日はいつも
人間を一人おいてけぼりにする
USBに保存した記憶は
一分一秒単位で刻み込まれたものばかり
今日という日が
三年、という月日よりも
どれほど長く感じられるだろう
永遠という言葉に酔いしれた夜は
今日以外には有り得はしない
小田の流れの水清く
桜の花の咲くところ
校歌の一部を口ずさむ
三年間存在した世界は消えて
今はただ
歌詞の一文だけが
音像となって
風に流れている
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ホームの上で詩人は座っている
座りこんで考えている
波の音
空の色
夕凪の気高さ
重力の惨さ
今日という日の時間を感じるように
今月はケータイを使いすぎて
料金が二万円を越えていた
クシャクシャにした督促状を開いて
またクシャクシャに畳む
詩を書くということは
かなり精神を犠牲にするので
ときたま
友達に片っ端から電話したくなる
今月が丁度、そんな感じだった
電車のライトが光る
遮断機が降りていく
流された筈の時間が巻き戻っていく瞬間に
僕はまた
新しい僕へなっていくのだ
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早朝のお台場付近を歩いてみた
灰がかかった空の中に朝らしい色を探る
今日のこんな朝にもどこかで誰かが
詩を書いている
合同詩集を作りたいという友人
つまり詩人のジョセフと
カメラマンのドメニコの為に
詩の素を探す
新人ジョセフは恋愛詩を書きたいというので
とりあえず恋をし
ドメニコは高層ビル群が撮りたいとかで
新宿に向かった
誰もいないTokyoは美しい
喧騒も排気音もどよめきもない
この広い空間に
僕たちは三人きりだ
Tokyo poemstory
僕たちは言葉を媒介にして空を飛ぶ
遠いどこかで何たらかんたら賛美歌が響くように
不具合な言葉は
今まさに命を紡いでいるのだ
明け方の空間が終わりを告げる
灰は今まさに青色
誰もいなくなった後で
最新詩集のタイトルだけを記憶している
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唐突に電話が鳴っている
受話器の向こうの世界を
僕はまだ知らない
好きだった女優が
先ほど女優でなくなった
時刻は日付変更線を越えている
生き残ってしまった罪悪感も
今日を生き延びている安堵感も
今となっては
紙切れのように薄っぺらい
人が人でなくなる時は
いつも辺りは真っ暗闇だ
happy,birthday
今日は確か
僕の誕生日
生と死の狭間の日
生き直すことも出来ずに
僕は今
死に向かって歩いている
途中下車も休憩もない
その空間で
ちょっとだけ泣きそうになる
一人部屋に女性が来た
朝を告げる目覚まし時計が半日遅れて鳴っている
ぎゅっ、とする
彼女が笑っている
そしたら
二人で笑い合っている
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クローゼットに籠もって
瞑想しようとしたら
そのまま眠りついた
世界の明るさ
人間であること
存在するという大義
何もかも嫌になって
また心を生き返している
真っ暗な空間は人を駄目にするという話を聞いた
そのほとりで人間は暗闇で眠り起き
昨日から今日
今日から明日へ
命を繋いでいる
全ての始まりは闇
真っ暗な世界のはずの真夜中、午前0時から
明日という光は始まっているのだ
人間は光の子でありながら
また、闇の子
生きていく上で隠し通すことは容易ではないけれど
さらけ出すということは
あらゆるものより美しい
クリィムソオダの泡でもって
人生を仕切り直ししよう
時刻は午前0時前
明けない夜明けの向こうに
また今日という名の明日が
その産声をあげ始めた
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通りの向こう側に
風を感じた
温度無きこの空間の中で
それは鮮明過ぎて
思わず僕は
立ち止まっていた
スペイン坂の辺りでエンジンを吹かす音と
焼きたてのパンの香りが
空気を掻き鳴らし
ゆっくりと伸びる影に沿って
風は西陽に照らされていた
生まれ変わる意味も
生まれ直す理由も
全て知っている
涙の味さえ
世界にとっては味覚でしかないというのに
一体この気持ちは何なのだろう
夜明け前の新宿を歩く
時は既に満ち足りている
体に感じる僅かな風圧の中で
今また
一つの詩が生まれ始めた
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ユニチカ通りの前を原付で走る
瞬きする瞬間
その速度は
商店街のイルミネーションとほぼ同じなようで
さよならの意味は
初夏の風に流した
口に広がる夏の酸味
夕風サイダー
たった一人分変化する世界は
数ミリズレて
なんか、眩しい
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ジプシーが
ニューデリー駅のホームで手を差し出してきた
通じる言葉などなくても
僕にはそれが何を意味するのかわかった
溢れる情報社会で
様々な言葉を
覚えなければならない世界だというのに
この国の人たちの手は美しい
空にすら
彼らの指はとうに届いている
差し出すことしか出来ないが
僕たちの指より
遥かに真っ直ぐ伸びきっている
二等列車は危ないからと
青年が声をかけてきた
時刻は既に遅く
あたりは暗闇
世界が寝付く瞬間だというのに
彼らは眠らない
あらゆる手段で
必死に今日を生き抜くために
眠らないのだ
暑さが増してくる
しかし夜は更けていく
地平線のような長さを帯びた夜は
何も感じない程
静寂に浸っている