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フィリップの部屋


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詩人:フィリップ [投票][編集]

金曜日に髪を切る
見慣れた人の
見慣れた手が
見慣れた手つきで
僕の髪に触れると
妙に安心する

鏡越しに見た
ヘアスタイルは
幾重に重なった
僕の欲望に取り巻かれている
視覚化された世界の裏に
美容師である彼は
心、というリアルを見ている
そう思うと
さっきまで開いていた口が
何故か大人しくなった


心はいつも
他の誰かを見つめている
好きになる時
恐れる時
羨む時
一つの偶然を紡ぎ
一つの必然として
気持ちは
世界のどこにでも
生まれ続けるのだ
まるで命のように


金曜日に髪を切る
美容師である彼の
繊細な指先が
僕に割引券を渡す

‘view’と名付けられた紙キレの中には
「ありがとうございます」
と書かれていた

2008/04/02 (Wed)

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