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ライカの部屋


[61] 暗に恋す
詩人:ライカ [投票][編集]

 ひゅうっ

毛先が風にさらわれた午後

言葉も奪われ

しばし

心の湖面に
静寂が訪れた


空 っ ぽ だ





居心地が悪かった

(ことばを )

( 言葉が)



息苦しさを覚え

湖面深く身を沈め
その奥に埋もれた言葉を探す


ずぶずぶと
湿り気を帯びる体

重くなりゆく体

水に馴染もうとする衣服




私しかはいれず

私しかいらない


孤独な作業




知を欲し

他を退け


溢れた水は
器を海へと代えた



私は深海に身を投じ

見たこともない
暗いブルーと


なんとも醜い自分


物欲しそうな自分


ひびが入り
愛が零れ落ちて
海藻のように漂う自分を見た



そこは 音の無い世界




でも

ここは 心地が良い

神がおらず

悪がおらず

正義さえいない




なんと


平和




暗闇にはいつか慣れるのだし









… でも
言葉が無くちゃ





一瞬
渇きが癒える

言葉には
そんな力があるはずで


癒えぬ渇きを
抱いたまま
見て見ぬふりをして
傷もこさえず
漂うことは

生きる意味はない
 私にとって。




ここには
言葉はない


他者が

他がなければ


いらないものだから






そうして

また水面を目指すことにした




月の光りが
零れる夜

そんな風に



今度は地に足をつけ

旅の寄り道は
終わった



2006/07/31 (Mon)

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